俳諧ガイド 目録

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歌仙

歌仙系 索引

歌仙歌仙の展開歌仙の展開歌仙資料

歌仙
芭蕉と歌仙

 ・ 蕉風確立後の芭蕉は、歌仙を中心に興行し、連衆が多いときは臨機応変に、世吉・五十韻・百韻にしたのではないかと思われる。

→ 「俳諧の形式、一巻物についてのまとめ」を参照

歌仙

 俳諧の形式の一つで36句からなる。三十六歌仙にちなむ。

→ 「俳諧の歴史、歌仙の連歌」を参照

 歌仙を作ることを、「歌仙を巻く」と言う。
 歌仙は、五七五の句と七七の句を交互に、計36句詠む。
懐紙式

 昔は、歌仙を懐紙二枚に書き留めた。1枚目を初折、二枚目を名残の折とか後(のち)の折と呼んだ。
 懐紙を折り、両面に句を書き留める。2枚あるので4ページとなる。
 第1ページを初折の表、第2ページを初折の裏、2枚目第3ページを名残(後)の表、第4ページを名残(後)の裏と呼ぶ。

 ※ 「名残」の名称は、興行中に湧く感情なので、完成後は「後」と呼ぶのが本来だが、完成後も名残が漂うと解釈し、ここでは「名残の折」を用いる。「後」は読み方も惑う。


歌仙の展開

句称説明
 

 

 
発句  最初の句は発句(ほっく)と言う。五七五の長句で、そのときの季語を必ず入れる。
 季語と切れが、句の世界に無限の広がりをもたらす。
 芭蕉は、「すらすらと一筋によめ」とも「二つのものを合わせればよい」と言う。古来「句姿もたかく、位よろしき」がよいとされるが、芭蕉は「かろき」を好んだと伝わっている。(三冊子)
 また、発句は「すみずみまで言いつくすものではない」と言ったと、去来抄にある。句の格は、客(客の位であって、客の立ち場ではない。また、挨拶をする句ではない)。
 なお、「神祇・釈教・恋・無常」(※注)は、初折の表(発句を除く)に詠まない。
 発句の次を脇と言う。七七の短句で、発句に同じ季・時刻・場所の句を添えます。
 発句をさまざまに配慮して引き立てるように心掛ける。付けるのではなく、添える句。亭主の位。
 添えるとは、発句を十分味わい、無限の広がりをもつ発句に光景や心情を補い、一つの世界を作る。自分の思いや感情を詠むと添えたことにならない。また、発句への応答であってはならない。贈答は長句同士で行う。
 韻字(漢字で書き表せる語、体言・用言。付属語以外)で止める。
第三 「第三」は固有の名称。五七五の長句で、丈高く品位ある句がよいとされる。
 「ヨーイ、ドン」に当たる句。「て・にて・らん・もなし」などで止めるか、これを省略した形で止める。
 発句・脇の世界から離れるよう工夫する。発句が春秋の場合は、同季になる。初春から中・晩春へ、動植物から人事へなど、工夫する。相伴者の位。
 4句目は軽く付けるが、遣り句ではない。第三をきちんと受け、5句目以降が自ずと生じるように付ける。
 4句目から挙句の前句までを、平句と言う。七七。
 月が出ていなければ、ここで月を詠む。五七五。
折端 6句目は初折の表の末尾で、折端と言う。七七。
 表合わせのとき、挙句にする。

折立  最初の句を折立と言う。表六句のしばり(神祇・釈教・恋・無常はよまない)はない。のびのびとした句が調和する。五七五。
七七
五七五
七七
五七五
七七
この面に月が出ていなければ出すとよい。五七五。
七七
五七五
10七七
11この折に花が出ていなければ、ここで詠む。五七五。
折端折端と言う。半歌仙のときは、挙句に作る。七七。










折立 折立。五七五。
七七
五七五
七七
五七五
七七
五七五
七七
五七五
10七七
11この面に月が出ていなければ、ここで月を詠むとよい。五七五。
折端折端。七七。

折立折立。五七五。
七七
五七五
七七
この折に花が出ていなければ、ここで詠む。五七五。
挙句挙句。七七。
※ 神祇・釈教・恋・無常……「決め事」の「用語」を参照。また、表六句では、述懐・名所・旅なども避ける。

歌仙資料

 芭蕉一座歌仙の発句(頭5字のみ)を示す。

 貞享元年の「冬の日」前、百韻・歌仙はほぼ同数であったが、蕉風開眼の「冬の日」以後、百韻の興行はわずか2回で、ほぼ歌仙の興行となっている。  → 「俳諧の形式、一巻物」

 半歌仙は「冬の日」以後に限られる。

芭蕉一座の歌仙
延宝4「時節嘸伊賀」
延宝6「実や月間口」「のまれけり」「青葉より紅」「塩にしても」「わすれ草煎」
天和2「月と泣夜生」「花にうき世」「詩あきんど」「飽やことし」
天和3「夏馬の遅行」「胡草垣穂に」
天和4
貞享元
貞享元/「師の桜むか」「狂句こがら」「はつ雪のこ」「つゝみかね」「炭売のをの」「霜月や鸛の」「海くれて鴨」
貞享2「何とはなし」「つくづくと」「ほととぎす」「牡丹蘂深く」
貞享3「花咲て七日」
貞享4「久かたやこ」「花に遊ぶ虻」「時は秋吉野」「京まではま」「めづらしや」「星崎の闇を」「笠寺やもら」「磨なをす鑑」「ためつけて」「箱根越す人」
貞享5
元禄元
「何の木の花」「鼓子花の短」「初秋は海や」「粟稗にとぼ」「色々のきく」「雁がねも静」
元禄元/「其かたちみ」「雪の夜は竹」「雪ごとにう」
元禄2「水仙は見る」「衣装して梅」「かげろふの」「秣おふ人を」「風流の初や」「かくれ家や」「すゞしさを」「おきふしの」「さみだれを」「御尋に我宿」「有難や雪を」「めづらしや」「温海山や吹」「馬かりて燕」「あなむざん」「はやう咲九」「一泊り見か」「いさ子ども」「霜に今行や」
元禄3「鴬の笠落し」「種芋や花の」「木のもとに①」「木のもとに②」「いろいろの」「市中は物の」「秋立て干瓜」「月見する座」「灰汁桶の雫」「鳶の羽も刷」「ひき起す霜」「半日は神を」
元禄4「梅若菜まり」「梅若菜鞠子」「蝿ならぶは」「牛部屋に蚊」「安々と出て」「御明の消て」「うるはしき」「其にほひ桃」「此里は山を」
元禄5「鴬や餅に糞」「両の手に桃」「青くても有」「苅かぶや水」「けふばかり」「口切に境の」「水鳥よ汝は」「洗足に客と」「打よりて花」
元禄6「野は雪に河」「風流のまこ」「篠の露はか」「其冨士や五」「朝顔や夜は」「初茸やまだ」「帷子は日ゝ」「いざよひは」「十三夜あか」「振売の雁あ」「芹焼やすそ」「雪の松おれ」「いさみたつ」「いさみ立鷹」「生ながらひ」
元禄7「むめがかに」「傘におし分」「五人ぶち取」「八九間空で」「空豆の花さ」「紫陽草や薮」「新麦はわざ」「世は旅に代」「水鶏啼と人」「柳小折片荷」「鴬に朝日さ」「葉がくれを」「牛流す村の」「夕顔や蔓に」「夕がほや蔓」「夏の夜や崩」「ひらひらと」「秋ちかき心」「あれあれて」「つぶつぶと」「松茸やしら」「猿蓑にもれ」「升買て分別」「秋もはやば」「白菊の眼に」
芭蕉一座の半歌仙
貞享5
元禄元
9月「しら菊に高」8吟。[江戸]/9月「月出ば行灯」7吟。苔翠亭[江戸]
元禄27月「残暑暫手毎」13吟。金沢一泉亭[奥細道]/2年9月「野あらしに」8吟。大垣[奥細道]
元禄3春「日を負て寝」5吟。伊賀[奥細道後]/8月「白髪ぬく枕」3吟。膳所[奥細道後]
元禄410月「もらぬほど」10吟。大垣斜嶺亭[奥細道後]
元禄58月「名月や篠吹」5吟。江戸[江戸]/冬「月代を急ぐ」9吟。芭蕉庵[江戸]/12月「木枯しにう」7吟。江戸千川亭、大垣藩邸[江戸]
元禄6冬「雪や散る笠」6吟。江戸[江戸]
元禄7春「水音や小鮎」6吟。江戸[江戸]/9月「秋の夜を打」7吟。大坂車庸亭[最後の旅]/9月「此道や行人」10吟。大坂清水[最後の旅]