俳諧ガイド 目録

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歌仙系百韻系発句作法脇作法
第三作法初表作法平句作法・付句名残裏・挙句作法


初表の作法

初表の作法 索引

初表初表について蕉風以外の説確認したこと
初表作法初折表について
4句目、貞門4句目、芭蕉の伝5句目以降(百韻)
初表の作法資料
4・5・6句目4句目作法・特徴5句目作法・特徴
6句目作法折端は幽玄体?6句目特徴

 


 


初表
初表について
① 懐紙式初折の表で、歌仙の場合発句から第六句までである。
② 初表は、「目立つ・耳だつものは詠まないという表の制約」に従う。この制約は、発句及びそれに従う脇を除く。
蕉風以外の説
❶ 初表に、「女偏の字」は詠まない。
❷ 「祝う・祭り・烏帽子・子の日」は神祇なので、表に詠まない。
❸ 「鐘・盆・数珠」は釈教なので、表に詠まない。
❹ 「人名・地名」などは表に詠まない。
❺ 「旅・名物」は、表に詠まない。
❻ 「病・薬・骨・戦や兵器・争い・述懐・懐旧」などは表に詠まない。
❼ 「汚物・害虫」などは、表に詠まない。
❽ 「鬼」は、表に詠まない。
芭蕉の俳諧で確認したこと

❶ 初表に、目立つ・耳だつものは詠まない。「恋の情」もその一つ。恋の情に「奴・好・如・妙・妨・妥・委・始・姓・姿・威・姜・娯・媒・嫌」などは関係しないことが多い。
   発句  兼も莚織けり花ざかり     嵐雪 炭俵
   初オ5 物の餅を絶さぬあきの風    野坡 炭俵「振売の」

・ 「愛する」も同様に恋の情がなければよい。
   第三  蝶蜂を愛するほどの情にて    良品 蓑虫庵小集「木の本に」

 ▼ 初表に、「女偏の字」は詠まない。
 △ 初表に、「恋の情」は詠まない。


❷ 祝うは、神祇だが、祝福の飲食・贈り物の「祝う」は世俗の用語である。
   初オ4 しとぎ祝ふて下されにけり    素男 猿蓑「梅若菜」
 その他、衣装の烏帽子・装束、一般的な鈴・手水・拍手、暦・天文・占、行事の雛祭・七夕祭・祝賀の祭りも除く。
・ 子の日・初午・玄猪などは時節である。
   初オ5 千代経べき物を様々子日して   芭蕉 猿蓑「灰汁桶の」

 ▼ 「祝う・祭り・烏帽子・子の日」は神祇なので、表に詠まない。
 △ 初表に、「神祇」は詠まない。但し、神道に関連する世俗の行為・行事・時節・名称などを除く。


❸ 時報の鐘は釈教ではない。
   脇    おもしろふかすむかたがたの鐘 野水 春の日「なら坂や」
   初オ6  歯ぎしりにさへあかつきのかね 越人 曠野「落着に」

・ 盆は時節である。
   初オ6  昼寝て遊ぶの友達      芭蕉 芭蕉翁俳諧集、半歌仙「水音や」
・ 釈教の語が入る動植物の名、地名は、釈教としない。
   第三  雨あがり珠数懸鳩の鳴出して   孤屋 炭俵、百韻「子は裸」

 ▼ 「鐘・盆・数珠」は釈教なので、表に詠まない。
 △ 初表に、「釈教」は詠まない。但し、仏教に関連する世俗の行為・行事・時節・名称などを除く。


❹ 「武将名・賤女名・烈女名・仙人名」は詠まない。「官名・風流名・通名」は詠む。
   第三  有明の主水に酒屋つくらせて   荷兮 冬の日「こがらしの」
   初オ5 麻呂が月袖に鞨鼓をならすらん  重五 〃「はつ雪の」
   初オ6  桃花をたをる貞徳の富     正平 〃「 〃 」
   初オ5 月影に利休の家を鼻に懸     正秀 ひさご「畦道や」

・ 表に詠まないのは、「名所」である。「唐土・日本・都・吾妻の類(『星月夜』)」のような大国名は除く。
   初オ5 朝鮮のほそりすゝきのにほひなき 杜国 冬の日「こがらしの」
・ 固有名でなければよい。「岐阜」は稲葉山城辺りの通称。
   初オ6  ひだりに橋をすかす岐阜山   野水 〃、表六句「いかに見よと」
   初オ4  与力町よりむかふ西かぜ    利牛 炭俵、百韻「子は裸」

 他に、「京・旧都、田舎、無名の名所・旧跡」もよい。

 ▼ 「人名・地名」などは表に詠まない。
 △ 初表に、「武将名・賤女名・烈女名・仙人名」は詠まない。「官名・風流名・通名」は詠む。
 △ 初表に、「名所」は詠まない。「国名」は詠む。


❺ 旅・旅体は元より、無名の名物はよい。
   第三  春の旅節供なるらん袴着て    荷兮 春の日「なら坂や」
   第三  蕨烹る岩木の臭き宿かりて    越人 春の日「蛙のみ」
   第三  のどけしや早き泊に荷を解て   昌碧 曠野「遠浅や」
   初オ4  駕篭のとをらぬ峠越たり    路通 ひさご「いろいろの」
   初オ5 此筋は銀も見しらず不自由さよ  芭蕉 猿蓑「市中は」
   初オ6  人にもくれず名物の梨     去来 猿蓑 「鳶の羽も」

 ▼ 「旅・名物」は、表に詠まない。
 △ 初表に、「旅」は詠む。但し、発句が旅の句でないときの脇を除く。
 △ 初表に目立つものは避けるので、「名物」は詠まない。但し、「無名の名物」は除く。


❻ 「咳・頭痛・薬・医者」など、生死にかかわらぬ軽い病や医薬は詠んでよい。
   初オ4  百足の懼るたきけり     野水 曠野 「遠浅や」
   初オ5 真木柱つかへおさへてよりかゝり 越人 〃  「月に柄を」
   初オ4  外面薬の草わけに行      嵐雪 〃  「我もらじ」
   初オ5 片隅に虫歯かゝへて暮の月    乙州 猿蓑 「梅若菜」

・ 無常にかかわらぬ骨はよい。
   第三  花棘馬骨の霜に咲かへり     杜国 冬の日「炭売の」
・ 無常にかかわらぬ軍事・兵器、軽い争いはよい。
   第三  歯朶の葉を初狩人に負て   野水 冬の日「つつみかねて」
   初オ5 音もなき具足に月のうすうすと  羽笠 〃  「霜月や」
   初オ4  ながらの火にあたる也    李風 春の日「春めくや」
   初オ5 碁いさかひ二人しらける有明に  怒誰 ひさご「鉄砲の」
   初オ4  たぬきをゝどす篠張の弓    史邦 猿蓑 「鳶の羽も」

・ 軽い述懐、無常にかかわらぬ懐旧・涙・夢などはよい。
   初オ6  茶の湯者おしむ野べの蒲公英  正平 冬の日「つつみかねて」
   初オ4  桧笠に宮をやつす朝露     杜国 〃  「いかに見よと」
   初オ5 祖父が手の火桶も落すばかり也  其角 炭俵 「秋の空」
   初オ6  薮越はなすあきのさびしき   野坡 〃  「むめがかに」
   初オ7 暮の月干葉の茹汁わる臭し    利牛 〃、百韻「子は裸」
   初オ5 霜気たる蕪食ふ子ども五六人   沾圃 続猿蓑「雀の字や」
   第三  大根のそだゝぬ土に伏し暮て   芭蕉 続猿蓑「いきみ立」
   初オ5 古戦城月も静に澄わたり     嵐蘭 深川 「苅かぶや」、城はママ
   初オ6 猿のなみだかおつる椎の実    芭蕉 蓑虫庵小集「木の本に」
   初オ5 に来て鼾を語る郭公      其角 次韻、五十韻「鷺の足」

 ▼ 「病・薬・骨・戦や兵器・争い・述懐・懐旧」などは表に詠まない。
 △ 初表に、「無常・重い述懐」は詠まない。但し、軽い病や無常にかかわらぬものは詠む。


❼ 糞・雪隠・害虫は表に詠む。
   初オ5 馬糞掻あふぎに風の打かすみ   荷兮 冬の日「つつみかねて」
   脇    唯牛糞に風のふく音      洒堂 ひさご「亀の甲」
   初オ4 こへ草けぶる道の霧雨      北鯤 深川集「苅かぶや」
   第三  月にまつ狸の糞をしるしにて   芭蕉 鵜の音「ひき起す」
   初オ4  百足の懼る薬たきけり     野水 曠野「遠浅や」
   脇    のおるばかり夏の夜の疵   越人 曠野「月に柄を」
   第三  旅人のかき行春暮て      曲翠 ひさご「木のもとに」

 ▼ 「汚物・害虫」などは、表に詠まない。
 △ 初表に、「目立つもの」は詠まない。但し、身近なものは嫌わない。


❽ 無常にかかわらない鬼、狐狸、竜などは詠む。
   初オ4  三線人の鬼を泣しむ      其角 虚栗「詩あきんど」
   第三  月にまつ狸の糞をしるしにて   芭蕉 鵜の音「ひき起す」
   初オ5 百ヲふる狐と秋を慰めし     李下 虚栗「飽くやことし」

 貞徳十首に「鬼女とらおほかみの千句もの 面にもすれど一座一句に」とある。

 ▼ 「鬼」は、表に詠まない。
 △ 初表に、「無常」は詠まない。但し、無常にかかわらぬものは詠む。

初折表について

<蕉風の初折表>

 ① 初折表に、「神祇・釈教・恋・無常・重い述懐・名所」など、目立つものは詠まない。但し、発句及びその脇を除く。

 →「貞享式海印録巻、去嫌まとめ/神祇以下」参照。

 ② 月の句を一つ詠む。

 →「俳諧の決め事、月の句」参照。

 ③ 歌仙の短縮形として、芭蕉は次のものを残す。
  ㋑発句脇の付合、46。 ㋺三つ物、35。 ㋩四句物、8。 ㋥五句物、2。 ㋭ 六句物、15。
   ・ これらは、旅先・行事・儀式など、時間的制約があるときのものである。
   ・ また、特別な形ではなく、連衆の数によって句数が異なるとしたほうがよい。

→「俳諧の形式と芭蕉、表六句以下」参照。

 ④ 4句目は趣向を軽くするが、会釈ではない。また、第三が軽いときは、重くする。
   ・ 4句目末は、「なり・けり・たり」や「なり」を省略した体言・用言などで結ぶことが多い。

 →「「俳諧の作法二十五箇条資料。芭蕉七部集、脇/第三/四句目」参照。

 →「「初表作法/資料、4句目作法」参照。

 ⑤ 5句目は第三のように丈高くするか、用言の連用中止で言い流す。
   ・ 5句目末は、打越の第三を見定め、、別の助詞・助動詞か、「て・にて」を省略した体言・用言で結ぶ。

 →「「初表作法/資料、5句目作法」参照。

 ⑥ 6句目も軽々とした幽玄体で付ける。
   ・ 6句目末は、打越の4句目を見定め、「なり・けり・たり」を省略した体言・動詞終止形などで結ぶことが多い。

 ↓「「初表作法/資料、6句目作法」参照。

4句目、貞門
俳諧埋木

四句め

 四句めをば、脇の句より引さげて、やすやすと付候ふを、四句めぶりと申し候ふ。とまりは、なり・けりなどゝ、いひながし、然るべく候ふ。

俳諧小式

四句目之事

 脇の句のおもぶりとは、一くらゐ替りて、いかにもかろく仕立たるよし。その故に、「てにをは」にて、「たるたり・なり・めり」などと留る由、紹巴の口伝書には侍れども、また、文字にて「路みち・雪・雲」などと留りたるも有なり。
 ただ、かるく付けたるよきと言ふ心なるべし。連歌には面おもて連歌とて、かるきを専せんにし侍れ共、俳諧にはただかろきばかりにて、なまづきなるはおもしろげなきなり。能く心得べし。

4句目、芭蕉の伝
二十五箇条

四句目軽事
① 四句めは決前生後(前をまとめ後を起こす意)の句なれば、殊更大事の場所なり。
② 軽みといふは、発句・脇・第三までに骨折たる故としるべし。
③ 只、やり句するやうに云なしたれど、一巻の変化は此句よりはじまる故に、万物一合とは註したるなり。
④ 都て、発句より四句め迄にかぎらず、あるひは重く、あるひは軽く、あるひは安く、あるひはむつかしく、其句其時の変化をしるべし。
⑤ 此掟は、中品以下のためにして、中品以上の人とても、此掟の所以と云事をしらざれば、自己の俳かいのくらき人といふべし。
貞享式海印録

四句目

[二十五箇条①~④]
▲ 句・脇・三に力を竭たる(つくしたる)巻は、四句目会釈(あしらい)にてもよからむ。若し、第三会釈にて付けたらむ時は、四句目は必ず起情して、力を入れずては、一座按力落ちて、其の巻成り立つまじ。此の故に大切の場と云へり。又「重く」と云ふは起情。「軽く」と云ふは会釈の按じ方。「安くむつかしく」と云ふは趣向の事なり。此の故に、やり句を禁ぜられたり。


[一巻伝(支考)]
  貞徳より、四句目は軽くする事と、世にも覚えけれど。只、句作の軽き事にはまりて、趣向を軽く、按ずる事を知らず。我門の俳諧は、句作の軽重は、強ひてかまはず。其の趣向の軽き様にと、心を第三に配りて、句作は前後の争ひによるべし。
▲ 爰に趣向といふは、前句の見立の事にて、第三の意を虚に、軽く見かへよといふ事なり。…略…、こは、貞徳の、四句目は軽くと云ふ詞を仮(借)りて、翁は「見立を軽く按じよ」と教へられたり。
 「軽」といふを、「句作軽きにげ句の事」と、心得違ひたるは非なり。又、四句目風俗ぶりともいふ詞を「振の句」、振の句と物を振替ふる事の様に言習ひたるも誤りなり。
 又、四句目は、文神に比すれば、舟をいむと云ふ浮説あり。蕉門にはさる愚論なし。

5句目以降(百韻、貞門)
俳諧埋木

五句め

 五句めは、第三の句をかたどり、たけをたかく、御沙汰一々有り候。韵は、らんなどはねて、然るべく候ふ。左なくは、いひながしたるべく候ふ。

俳諧小式

五句目之事

 これも、たけ高く、第三のおもかげに仕立たる能なり。されども、左様にばかりはなりがたき故、たけたかからぬ句も仕る事に候ふ。すべて上の句の、「てどめ・らん止め」の句は、第三をつかうまつる心にて仕たるよし。

俳諧埋木

八句め

 八句めは、詞につまり候ふゆゑに、何となくかろがろと、幽玄体をもて付け候ふを、八句めぶりと申し候ふ。

俳諧小式

面八句之事
付九句目

 おもて八句之事、大かたの法度、貞徳の十首の歌を以て類ををし給ふべし。そのひとつに、
  誹諧は式目ぞなき大かたは 和漢のごとく去きらふべし
  和漢には季・恋・述懐・旅・同字 連歌のごとくしかるべき哉

 但、「打」といふ字のやうなる「てには」字は、いづれも三句ざりなり。
  誹諧は右五色ををしなべて 七句をば五句五句は三句に
  名所・国・神祇・釈教・恋・無常・ 述懐・懐旧おもてにぞせぬ
  水辺やまた山類の体用は 連歌のごとく用ゆべきなり

  私に云、連歌には「水辺・山類」ともに、体用用とか、用体体とは三句つゞき、用体用・体用体とはさみてはせず。しかれども、貞徳晩年には、体用のわかちなく、三句つづけてせられしなり。此ゆへ、貞徳流をくむものは、今体用をわかたず。猶、その座の宗匠次第なるべし。
  鬼女とらおほかみの千句もの 面にもすれど一座一句に
  新式の一座一句は二句すべし 二句の物をば三句有べし
  三句ある物は四句有四句のもの おもてをかへて五つあるべし

 私云、かく四句のものは五つとゆるし来れども、四本の花を五句する事はなし。此心を以て、余はなぞらへしるべし。
  新式にうらと面をきらふもの はいかいにては七句さるべし
  連歌にはせぬ物の名や古事詞 けやけきものは一座一句に

 やつがれ、そのかみ、九句目に、恋の句をつかうまつり侍れば、或人難曰、「連歌には十句目まで、恋・無常等の句にはゞかり有。いかに誹諧は法度ゆるきとて、九句より恋などせん事いかが」と申されしを、予こたへ侍しは、「そのあやぶみなからしめん為に、古人法をたてをかれたり。これにかぎらず、季は連歌には七句去を誹諧には五句去なるをも、連の事思ひ出て、七句さらば連誹の替めなし」と理りことわり侍し。
 かやうの遠慮ずきたる事、田舎説とて、連歌よりもまゝ有事に聞及候ふ。いまも田舎にはしかとしたる宗匠なき故、云がちのやうに、さまざまのいりほがなる事有。また、京の宗匠たちはあまり物やはらかにて、打こしの心、吟味なきがちなり。入れあはし侍らば、都鄙とひともに、上手、出来侍べし。