貞享式海印録巻、去嫌まとめ(蕉風)

貞享式海印録 去嫌まとめ 索引
日・星 天候時分時節
植物生類水辺山類
神祇釈教
無常述懐名所
居所人倫肢体
言葉用字 (当字・同字・異体・留字・折合)辞(てには) (助詞・助動詞等)
用言 (動詞・形容詞等)体言 (名詞・代名詞)
副用言 (副詞・連体詞等)数字送り字 (踊り字)
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貞享式海印録 曲斎述   安政6年(1859)序

 

 貞享式海印録は、芭蕉出席の巻を典拠とし、不足を蕉門の巻で補っている。この「去嫌まとめ」は、海印録に示された蕉門の去嫌を、一覧表にしたものである。

 

 1 付け可は、㋣で示した。 <例>月㋣行灯 ……… トは片仮名。

 2 打越可は、①で示した。 <例>雪①雲 ………… 数字は、間の句数。

 3 二句去は、②で示した。 <例>雨②雪 ………… 「雨」と「雪」の間に、2句以上。

 4 三句去は、③で示した。 <例>あめ③さめ …… 「あめ」と「さめ」の間に、3句以上。

 5 五句去は、⑤で示した。 <例>あめ⑤あめ …… 「あめ」と「あめ」の間に、5句以上。

 6 面去は、-で示した。  <例>雪-雪 ………… 同じ面に詠まない。

 7 折去は、∧で示した。  <例>時雨∧時雨 …… 同じ折に詠まない。



貞享式海印録、去嫌のまとめ

 ・ 非月
付け可月に非月物:月㋣行灯、月㋣宵闇、月㋣非月の有明
打越可訓月と異名:卯月①弓張/音月と異名と正の月:六月①有明/日次に月:日永①月
月に天象:月①降・聳・風・照・朧・影・天/月に同時分:月①夕間暮れ、有明①朝
二句去月日星相互:月②星、日②月/げつ・がつ:名月②正月
三句去月に月次:月③卯月/月に非月の月:有明③月日
五句去五去かつ面去:月⑤-月
面去面を隔て五去:月-⑤月
月の句

・ 異名、歌仙に二。
・ 同他季の月、歌仙に二。
・ 前後同趣向は苦しからねども、同体は宜しからず。

・ 月待、月祭は、正の月の事。
・ 月に、蛍・稲妻・花火の付。光りを称美の物なる故に、月に押されぬ様にすべし。

 ・ 
付け可

日に今日の例多し。

打越可

日と降・聳・風・冴・照・天: 日①風/日と月次: 日①六月
日次と地名: 晦日①星崎/日と昨日・今日・明日・朔・晦: 日①昨日

二句去

日と日次:朝日②日永/数字と日次: 三日②百日

三句去

日光と陽気: 日射③日和

面去

星と年月: 星-星霜

折去

同体の日:入日∧夕日、朝日影∧春日影
同季の日:春日∧春日、日永∧永き日


天候 (乾坤)
付け可

降物に異る降物・聳物・風: 雪㋣霜、雨㋣雪
聳物に異る聳物・光物:雲㋣霞、雲㋣雷

打越可

降物と聳物・光物・空:雪①雲、雪①雷、雪①空
風と降物・聳物:風①霧、嵐①霙
煙・陽炎と降物・聳物:煙①雪、陽炎①雨
その他:風①吹く、風①寒い、空①天人、晴①照

二句去

異なる降物:雨②雪、雪②霧
異なる風:風②凩
異なる聳物:霧②霞、霧②虹

三句去

雨異訓:あめ③さめ
風同訓:春風③秋風、雲③浮雲

五句去

雨同音訓:あめ⑤あめ、さめ⑤さめ、空⑤空、影⑤影、照⑤照、晴⑤晴

面去

同じ降物:霜-霜、露-露、雪-雪
その他:闇-闇、光-光る、曇-曇る、天-天、氷-氷る

折去

目立・耳立:時雨∧時雨、嵐∧嵐、颪∧颪、春風∧春風、霞∧霞む、霧∧霧
「天気」の文字:天気∧天気


時分
付け可

夜分に夜分可

打越可

異時分:宵①明け、昼①夕
夜体相互:月・雷・暮・夕・明・暁・露・霜・閨・枕・蚊屋・眠・起・夢・灯

二句去

夜分:夜②宵、更け②闇、暗②星明り、暮れ③朧

三句去

同字:朝③朝、夕③夕、暮③暮、夜③夜、明け③明け


時節
打越可

時節同士:名月①彼岸、正月①春
異名月並:師走①如月
四季相互:冬①春

二句去

年、音訓:ねん②とし
夏冬同季、1~3続

三句去

年同訓:とし③とし
寒季変:寒③肌寒

五句去

異月音訓共:正月⑤卯月、三月⑤四月
同四季:夏⑤夏
春秋同季、3~5続

面去

涼同季:涼し-涼し
寒同季:冬寒-冬寒

時節の句

・ 他季に変わる安易な「春・夏・秋・冬」、許さず。
・ 春秋の季を引上ぐるに心得あり。
・ 素春、歌仙に一回。第三までは常体。発句に他季の花など、心得。

・ 歌仙に、夏2回、冬2回、夏冬各1回、夏冬何れか1回で、定めなし。
・ 素秋出たとき、素春せず。


  匂の花
付け可

花前後、雨風苦しからず。/花前後、名所苦しからず。

打越可

非植物:花①松花堂/打越植物可:花を下げる。/風に散る花:秋風①花散る

三句去

正花-有名:花③卯花、花③花薄/有名-有名:萩花③菊花
花-他季桜

面去

花と同季桜: 花-桜

折去

正花:花∧花

正花(春)

 花供・花陰・花会式・やすらい花・花生<花にちなんだ名>\作り花・紙花・餅花<作り花>\花嫁<人間一世の花>\花の顔・花莧肌<すがたの花>\心の花・褒美の花、これ等皆曲節物なれば、好んでは用ひず。

正花(他季)

 残る花・若葉に結ぶ花・花御堂・花摘・氷室の花<正しき花>
 花火・花灯篭・池坊立花・花の頭(はなのとう)<作り花>\花角力・花踊<人の花>\花紅葉<雑にもある>
 餅花・造花・花炭<作り花の例>\帰り咲き・帰り花・忘れ咲<花字なくても>此類も曲節物なれば、好んでは用ひず。

非正花

 花の兄・花桜・赤き花・花の宰相(芍薬)・花の君(杜若)・花の弟(菊)・花野・花畑・花壇・草の花・秋の花(以上、草)
 月の花(光)・風花(雪)・雪霜の花(雑)・花田・花色・花染・花の帽子(以上、千草)\浪の花・湯の花・椛花・花かつを・茶の花香・花かいらぎ・花ぬり・灯の花・火花(花火でない)・花やか・花々し・花子(はなご)。

一巻一句の花

 月花を結ぶ句、他季の花、短句の花、正花の桜、花(か)の字、右五つの内一つ出づる時は、百韻にても外はせず。\贋物の花、風雨付くる花、名所付くる花、花に桜の付句、神・釈名、名所、恋、同景物の花、散る・咲く・莟等の花。\其外、同体の運びを許さず、花は月より制重し。


植物
打越可

木と草:松①菊/非植物:草枕①麻、苗代①草/桂(月):桂①藤

二句去

異木:松②木槿/異草類:茨②笹

三句去

木・草の字:草取③草庵

五句去

松・竹:松⑤松山、古竹⑤竹切/枝・葉:葉⑤葉

面去

苗・根・菜:根-根/穂・実・種:穂-穂/薮・柴:薮-薮
楓に紅葉

折去

:春季∧帰花/:春夏∧秋冬/:夏秋∧残菊・枯菊
紅葉・梅・蕎麦

一巻一句の植物

 芽柳・青柳・葉柳、異名の内にて一
 早咲・寒梅・紅梅・匂ひ草、花の兄の内一
椿 冬椿・玉椿、異名の内一
 ひがん桜・いせ桜・山桜・やへ桜・吉野草、化名草の内一
 ひ桃・白桃・やへ桃・みきこ草・みちよ草等の内一
山吹 俤草にかへても

若菜 二字もの
燕子花 顔よ花・花の君、と異名にかへても
牡丹 冬牡丹・深見草・廿日草、のうち
 青楓・若楓としても
紅葉 柿・梅・蔦等の名ある物にても
 夏菊、花の弟等の異名にかへても
芭蕉 二字
水仙

・ 上記のうち、盛衰にて、一巻二つ可。折去
(春一、帰一)。(春夏の内一、秋冬の内一)。(夏秋の内一、残枯の内一)


生類
付け可

生類:山雀㋣目白/蝸牛㋣蟻/白魚㋣雲丹/狢㋣猿

打越可

異生類:犬①鳥/鳴子類に生類・網に魚鳥:案山子①鴬
非生物、同体生類:雷①獣/馬①丑寅

二句去

同生類:時鳥②鷹/馬異体:絵馬②伝馬、馬②初午、馬②駒鳥

三句去

鳥の字:小鳥③水鳥/虫の字:虫干③虫

五句去

馬に馬の字/馬⑤馬方、馬⑤馬糞

面去

馬:馬-駒/干支:艮-子の刻/羽:面去+③/尾・鶏:尾-尾長
蜂異季貝類

折去

犬・牛:犬∧山犬、牛∧子牛/蜂同季魚・鯰
盛衰にて二つ
鴬・蛍・雁・燕・千鳥

一巻一句の生類

(経よみ・歌よみ・匂ひ鳥・笹鳴・付子の内一)、喚子鳥(かほ鳥・杲鳥・かほよ鳥・かんこ鳥・同物なれば、其の内一)、百千鳥、蝶、蝸牛(でゞむしとしても)、 時鳥(しでの田長・不如帰・橘鳥・恋し鳥等の異名にても)、

水鶏鶺鴒(いなおほせ・庭たゝき・真木柱・にはくなふり、一鳥なれば、其のうち一)。
(筆つむし・ちゝろむしとしても)、松むし。
又、狐・狸・鬼・虎・竜・雷・天狗の類

・ 上記のうち、盛衰にて、一巻二つ可。折去
 鴬(冬・春の内一、老・乱の内一)、蛍(夏一、残一)、雁・燕(帰一、来一)、千鳥(冬・春一、夏・巣一)。

非生類

  「雷・鬼の怪物」「水を放れし魚類」「狩の鳥獣」「田むし類の病名」「干支」「絵・彫物の生類」「喩物」「枕詞」「名所」「器財の生類名」「蚊屋」「馬士(ばし、うまかた)」の類也。


水辺
付け可

三句続きあり: 池㋣水㋣浪

打越可

異水辺:谷①川、舟①水、水①氷

三句去

同水辺:川③川、水③水

五句去

舟⑤舟

面去

目立つ同水辺:浪-浪、他に「流・滝・橋・海・浦・浜・池・井」


山類
付け可

三句続きあり:谷㋣山㋣浅間

打越可

異山類:崎①山、崖①尾上、峠①山

三句去

同山類:山③山

面去

目立つ同山類:峰-峰、谷-谷、島-島



神祇  ※ 表に詠まない。
付け可

神に釈神に無常

打越可

神名と仏名神と無常:鳥居①死/神と非神:八幡①烏帽子

二句去

斎②祭、祓②鳥居

面去

神の字-神の字、宮-一宮

神物

神・社殿・本殿・拝殿・神宮・神社・大社・磐座・郷社・幣殿・神殿・鎮守・御神体・神の権現・神の社・神の宮。
宮司・神主・祢宜・巫女・乙女子・宮人・斎主・斎員・社家・神職・楽人・陰陽師・神祇官。
参拝・手水・拍手・柏手・火打・祝詞・託宣・お祓い・夢想祓い・厄払い・清め・禊ぎ・御籤・起請・誓文・神楽・祭り・祭りの初午・参詣の講・神への願・遷宮。
玉垣・瑞垣・鳥居・参道・注連縄・本坪鈴・狛犬・御幣・金木・絵馬・神輿・三方・水玉・玉串。

非神物

衣装の烏帽子・装束。区分の宮家。一般的な鈴・手水・拍手。暦・天文・占。行事の雛祭・七夕祭。時節の初午・玄猪。金融の講。


釈教  ※ 表に詠まない。
付け可

釈に神寺に宮

打越可

釈と非釈仏:精進①衣/寺①西行/釈と無常:仏①骨

二句去

清水寺②知恩院、尼②坊主、観音②戒、仏②菩薩

五句去

てら⑤じ、お寺⑤東寺

面去

てら-てら、坊-坊、僧-僧、尼-尼、講-講

釈物

仏・寺・堂・庫裏・坊・塔頭・山門・塔。釈迦・阿弥陀・如来・観音・菩薩・地蔵・達磨・明王・羅漢・○○天・仏の権現。
一宗の元祖・宗派の長老・和尚・法師・検校・入道・尼・修験者・坊主・虚無僧・僧侶・比丘・座頭・和上・山伏。
発心・出家・座禅・布施・引導・経・安居・念仏・声聞・回向・剃髪・供養・手向・精進・潔斎・仏への願・法会の講・仏事の盆・仏事の十夜・仏道の修行。
仏像・釣鐘・数珠・卒塔婆・曼荼羅・枯山水・木魚。因果・宿業・流転・観念・観想・彼岸・火宅・三界・地獄・餓鬼・来迎・涅槃。

非釈物

 寺でない「庵・坊・院・寮」、笈・撞木・杖・頭陀袋・鐘・十徳・常の衣・行脚・坊主子・寺子。
 西行/長明/布袋の風流人・木像・先祖・伯父の説法・呑めば極楽・迷悟・閻魔・鬼・地獄・寺号の村名・僧正が谷・寺町・数珠屋町・数珠懸鳩。
 行事や暦の「盆・彼岸・十夜」、時節に作る菩提樹・華鬘の類。

  ※ 表に詠まない。
打越可

恋でない恋の字
恋する鹿①恋句

三句去

恋句③恋句

面去

恋の字-恋の字

恋の詞

貞門 夫婦・二世の契・ひよくの中・連理の中・偕老洞穴・寝物語・ささやく・ふりのよき・落とし文・身をこがす・小指切り・恋やせ・口紅・男狂・涕ぐむ・りんき・そひふし・人妻・睦言・涙川・爪紅・ 約束・怨念・傾城・遊女・婚礼・懐妊・くどく・ほるる・鬼も十八・やくそく・離別・おとし文・胸をやく・情ぶり・くどきごと・淵に身投・よめ入・口べに・爪べに・姿見の鏡・匂袋・恋風・長枕・若後家

連歌 なまめく・後朝・えにし・よすが・恋すてふ・ぬれ衣・片おもひ・恥かはし・思川・雅をかはす・恨み・かこつ・契り・もの思い・手弱女・上の空・心乱る・そねみ・ねたみ・さかしら・眉墨・逢瀬・添い寝・ささめ言・心替え・浅はか・独り居・乱れ髪・うかるる・目くばせ

蕉門 なし。


無常  ※ 表に詠まない。
付け可

幽霊㋣骨/浮世の露㋣散る

三句去

異無常:死③墓/玉棚③神垣

面去

同体無常:死人-骨、火屋-墓

折去

死∧死

無常の詞

腹切・辞世・孤独死・余命。死人・屍・野ざらし・白骨・髑髏・野仏・遺体。棺・あだし野・喪・通夜・葬儀・忌中・立ち酒・野辺送り・火葬・葬場・斎場・火屋・無常の煙。墓・塚・魂棚・位牌。死出の山・人魂・冥土・黄泉・幽霊。


述懐  ※ 表に重い述懐を詠まない。
打越可

異述懐:侘び①憂き、恨み①浮世、恨み①貧、身の恨み①恋の恨み

三句去

同体述懐:金欠③質屋、世捨③長生、貧③貧乏

述懐の詞

左遷・倒産・夜逃。零落・不幸・貧。老・年寄り・隠居・白髪・浪人・継子・寡婦・鰥夫・世捨。金貸・借銭・売家・古家・隠れ家・借家。渡世・浮世。命。往昔。


名所  ※ 表に詠まない。
付け可

国名に国名・名所:摂津㋣筑紫、伊勢㋣美濃、鴨川㋣京、深草㋣伏見

打越可

名所と京・外国・国・地名・名物:古都①浪花、黒塚①京、海岸寺①奈良

二句去

異なる名所:木曽②京。名所・地名・国名の組合せ:美濃②竜田川/国名同士:伊勢②佐渡

面去

京と都:京-都/国の字:国の守-夢想国師/外国名:唐-天竺

名所について

・ 歌仙に、名所・国名・地名等、合せて六七は例あり。
・ 一巻の内、同国同郷の名、二去に出てよし。
・ 名所を景物とする故は、旅泊の寂細・懐古の幽情、雪月花の哀れを観ぜむため也。

・ 国・地名の付けに後先なし。
・ 異なる国と名所付るも可。
・ 無名の地名、名所名を冠した無名の品は表に出してよい。

付け可

三句続きあり:仮枕㋣旧跡㋣愛宕参、宿㋣荷ふ㋣草枕。

打越可

旅体:白子①巡礼、旅人①司召し

面去

旅の字:旅-旅衣、旅芝居-旅

旅について

・ 旅は、名所に並ぶ景物。趣きは寂を主とす。

打越可

異場:麓①古戦場、河原町①橋、園①田、山①里、野①浜

二句去

田に畑:田②畑

三句去

野:野③野/道:道③道

五句去

田:田⑤田/畑:畑⑤畑

面去

何里、里(さと):三里-百里、里人-古里
他に、原・村・市・町・辻・庭・場・石・岩・砂・土


居所
打越可

異居所:家①寺、店①軒、寺①戸、家①間①草の戸

二句去

家の音訓:いえ・や・うち②カ・ケ、片山家②家渡り、院家(いんげ)①家

三句去

屋:岩屋③庄屋、豆腐屋③番小屋、小屋③屋越し

五句去

商号の屋:茶屋⑤紺屋、酒屋⑤呉服屋、湯屋⑤亀屋
壁に塀:壁⑤塀/他に、家・宿・門・戸・垣

面去

住-住、窓-窓、柱-柱、店-店、棚-棚、畳-畳

折去

庵∧庵、隣∧隣、風呂∧風呂、普請∧普請、屋敷∧屋敷、屋根∧屋根

居所について

居所とは、人の住む所なれば「宮・堂・蔵・湯殿・雪隠・門・垣・壁・築地」、「棚・建具・簾等」の類は、居所にあらず。


人倫
付け可

姿・情・用(姿・思い・行い):身㋣誰㋣主水、泣く㋣影法㋣主

打越可

人倫と異人倫の噂: 【主】 大名・神主・奥様・隠居など……人①大名、亭主①唐人
【誰】 翁・老・僧・相手・客・友・連衆・旦那・あなた・先生・敵……女房①長老
【身】 我・己・某・私・拙者・手前・自身……伯母①己、老人①我、影法師①唐人
【独】 一人・二人・幾人・大勢・群集・余・衆生……独り①宿の女
【媒】 医師・酒好・糸売・関取・曲者・大工・宮司・番頭・上手……仲人①奉行

人倫の字、異体:姫松①姥鴫/人に一人:人①一人
人倫と「仏・鬼・仙・天人」:妾①仏、娘①鬼、仲綱①仙女、子①文殊
非人倫の名と人名:①主水①竹斎(人名)、釈迦①西行(人名)

二句去

父母男女の類:祖父②祖母、伯母②乳母/一人に二人:三人②四人
人、異音訓:ひと②ニン、人足②人近な道/父母言替え:乳母②母親
子:子供②女子、子供②稚児
異る人名:宗盛②西行、弁慶②一休

三句去

人、同音訓:ひと③ひと、老人③客人、人通り③旅人

五句去

男女、異音訓:おとこ⑤だん、妓女⑤女房、遊女⑤女
己・我:己⑤己、我⑤我身

面去

同類古人名:祇王-楊貴妃、達磨-釈迦/男女同音訓:天女-貧女、女中-狂女
老若:老松-老、老いらく-老功、若い衆-若木-若い時
達衆:ばば達-弟子達、家中衆-公家衆-よい衆
他に、「誰・師・独・使」「武・賤・稚」「君・客」「妻・嫁・親・祖母」

折去

官名・武名・仙・俗名:頼朝∧信玄、百助∧孫六
他に「雇人・奉公人・坊主・弟子」

人倫について

・ 人倫とは親子・兄弟・娵聟・舅姑・祖父祖母・孫彦・伯父伯母・甥姪・妻妾等の、六親九族の文字。人名。
・ 主・誰・身・独・媒の五品は人倫の噂。指合を繰るべからず。


肢体
打越可

異肢体:身①毛、目①口、胸①腹、尻①肩

二句去

ひげに髪:髭②髪/軽病:痛む腹②疱瘡、離魂の悩み②やけど

三句去

手・口・目:手③手/身・心:憂き身③身、道具の心③風の心/気:元気③気

五句去

洟に洟紙:水洟⑤洟紙/夢涙:涙⑤涙、夢⑤夢

面去

髪:唐輪の髪-白髪/他に「頭・尻・腹」「顔・足」「肌・裸・皺・腰」
異る尿屎・雪隠:小便-雪隠、こえ舟-雪隠/重病:尼の持病-肱患う


言葉




用字 (当て字・同字・同字異体・留め字・折合い)
付け可

同字付句嫌はず:瓜畑㋣畑道、ある㋣ある、ながら㋣ながら、変わる㋣変わる

留め字:より㋣ある、やり㋣けり、送る㋣射る

打越可

当て字同訓:師走①師恩、折々①折る、御座る①座敷、朔日①月、尻目①役目
同字異音訓:大(ダイ)①大(おお)、大事①大原、小鳥①小路、お城①御ざれ
留め字:忘れたり①晴れ上がり、押し黙り①仕切りけり、送る①割かれける
同語異活用:なり①なる、けり①けれ、らめ①らむ
異語同活用:つく①炊く、舞ふ①恋ふ、持つ①立つ、固め①縮め、ゆかし①なし
て留め:寝て①かねて、輝きて①冷たくて、脱ぎ替へて①釣りて
助詞:覚めても①捜せども、三日でも①言はずとも

三句去

同字異体:松③松明、柳③柳行李、袋③お袋、天女③天竺、大津③大文字、朝飯③ご飯
留め字:「に・なり・けり・たり・らむ」留め、「と・ぞ・や・か・さ・過去し・た」留め、「かし・なし・なき」留め

面去

留め字:「もなし・べし」留め、「よ・を・な・ころ」留め

折去

留め字:「かな」留め、「つつ・ながら・らし・こそ・なりけり」留め

用字について

当て字(填字): 目出度いなどの借り字。

同字: 同義同音の字。

同字異体: 同字異義の語。

留め字 ここでは、句末の一音。

短句の「に留・て留」 : 蕉門は、一座の歌仙に2、百韻に3許す。一座ならば1、二座ならば2と云ふ定めは、蕉門にはない。 \ 体字留め : 歌仙に16続きあり。 \ てには留め : 歌仙に15続きあり。 \ て留め : 歌仙に7迄。 \ に留め : 歌仙に5迄。 \ なり・けり・ける・たり・らむ・るる・ず・ぬ留め : 歌仙に4迄。 \ もなし・べし・よ・を・な・ころ留め : 歌仙に3迄。

折合い: 表で、上・中・下の句末音が差し合うこと。

折合辞(おりあい・てには) : 歌仙表六句のうち、同一てにはの留め。
  脇 4 ┌ ・・・・・・○ ・・・・・・・
○ ↓ ↓ │
 第三 5 │・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・○

 第三 5 │・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・●
× ↓ ↓ │
  4 6 └ ・・・・・・● ・・・・・・・

留め字について

・ 短句の「て留・に留」は、歌仙に二、百韻に三まで。
・ 体字留、歌仙に十六続きあり。てには留、歌仙十五続きあり。

辞(てには) 多用の辞
付け可

辞続き限らず:「~る」続き/他に、「て・を・は・の・と・も

打越可

三四連続打越可
・ ~と①~と、他に、「は・を・に・ぬ・と・も」(助詞)
・ 「~す・~ふ・~ず・~ぬ・~ば」(四段活用語尾・助詞・助動詞)
・ 他に、「過去のし・へ・たる・ても・にも」(助詞・助動詞)
・ 「主格の」(助詞)
・ 「疑問のか・なに・いか・いかが・なぞ・たれ・いつ・いづこ・いく」(助詞・代名詞)
・ 「疑問・詠嘆の」(助詞)
上下にかはり越嫌はざる辞(意味用法の異なるもの)
・ 「で・ど・よ・ぞ・む・らむ・しく・しき・けり・なり・るる・なら・やら・から・より・うち」(助詞・助動詞・動詞形容詞の語尾・接頭語)

三句去

助詞:【格助詞】とて。【副助詞】とも・とて・ばかり・まで・さへ・程(ほど)。【係助詞】こそ。【接続助詞】とも・ども・とて・間(あひだ)。【終助詞】とも・まで・こそ。【連語】とも(格助詞+副助詞)。/助動詞:【助動詞】さう(様態「そうだ」の語幹)/接頭語:御(ご)・お・又・今/接尾語:所(数助詞)・ やか(形容動詞語幹形成)・こそ(呼掛など)。

面去

かりけり:雲なかりけり-後なかりける。(形容詞活用語尾+助動詞)

辞とは

 漢文で補って読む、助詞・助動詞、用言の活用語尾、接頭語・接尾語などの総称。


用言 (動詞・形容詞・形容動詞)
打越可

三去の用言、異活用:聞ゆる①聞く、懸ける①懸かる、出-来る①出す、差し込む①差す、冴え切る①切る、広い①広げる、立つ①夕立、打つ①打ち担う。

二句去

二去用言:見、居、居り、取、付、為(する)、有、がり、無、成、出、入、来、置、立て、立ち、打、当、合、知、善(よし)、懸け、懸り。見る②見る

五去・面去の用言、異活用・異体:付け渡し②かち渡り、呼ぶ②呼ばる、残る②残す。隠す、持つ、寄る、折る、乗る、通る、落ちる、返す。

三句去

三去用言:連、過、込、広、待、行、替へ、替はり、着(き)、聞き、聞こえ、思、言、啼、喰、吹、咲、散、降、狂、織、習、指。

五句去

五去用言:渡り、渡す、上げ、上り、下り、下す、分け、明け、引、寝、直り、書、好き、集、包、釣、捨、払、摘、持、控、折、敷、冷、返り、返す、帰、戻、落、覗、越し、篭、残り、残す、憂、長。

面去

文語動詞:【カ四】飽く・歩行く・動く・搗く・突く・続く・泣く・抜く・掃く・巻く・向く。/【ガ四】急ぐ・被ぐ・脱ぐ/【サ四】荒らす・押す・起こす・捜す・咄す・干す・乱す・召す/【ハ四】逢ふ・商ふ・洗ふ・追ふ・買ふ・通ふ・嫌ふ・誘ふ・仕廻ふ・揃ふ・違ふ・遣ふ・匂ふ・舞ふ・貰ふ・結ふ・笑ふ/【バ四】遊ぶ・忍ぶ・飛ぶ・並ぶ・結ぶ・呼ぶ/【マ四】恨む・惜しむ・汲む・澄む・染(そ・し)む・和む・憎む・盗む・飲む・踏む・読む/【ラ四】売る・終る・借(か)る・刈る・枯(か)る・語る・冠る・謗る・作る・通る・濁る・眠る・登る・流行る・掘る・参る・廻る・盛る・破る/ 【ザ上二】恥ず/【バ上二】侘ぶ【ガ下二】提ぐ・投ぐ/【ザ下二】案ず/【タ下二】果つ/【ナ下二】尋ぬ/【マ下二】定む・誉む/【ラ下二】恐る・隠る・離(はな)る・別る・忘る/【ワ下二】植う/【上二】起く/【カ変】出来(でく)/【下二】覚ゆ・消ゆ・寄す・覚む・初む・馴る・乱る。
口語動詞:【カ上一】起きる/【ラ上一】出来る/【ア下一】覚える・消える/【サ下一】寄せる/【マ下一】覚める・初める/【ラ下一】馴れる・乱れる。
形容詞:【形シ】荒し・薄し・疎し・重し・清し・臭し・近し・遠し・早し・深し・細し・弱し・悪(わる)し/【形シク】淋し。

用言について

 細かなる定めなければ、多例に拠るべき也。


体言
二句去

二去体言:此、物、高、小、先(さき)、中(うち)、内、折(時の)、笑(音訓)、古(音訓)

三句去

三去体言:【名詞】中・所・時・方(かた)・程・事・今・間・座・色・音・声・半・大/【代名詞】何・是。

五句去

五去体言:上(うえ)、上(じょう)、下(した)、様(さま)、様(よう)、世、新(しん)、古(ふる)、古(こ)、跡、陰、度、奥、裏、名、群(むら)、片、功。

面去

面去体言:皆、此方(こち)、爰(ここ)、どこ、よそ、あはれ、初(はつ)、外、前、後、横、末、縁(へり)、西、東、あだ、くせ、俄、仮、頃、徳、役、番、隙、間(あわい)、礼、献(こん)、香(か)、賃、数、昔、殿(どの)、留主、世中、浮世、自由、義理、機嫌、景色。

体言について 

 細かなる定めなければ、多例に拠るべき也。



副用言 (副詞・連体詞・接続詞・感動詞)
三句去

【感動詞】何/【接続詞】又(また)/【連体詞】其(その)。

面去

さて、いつ、いく、いかに、はや、先(まず)、猶、必

副用言に
ついて

・ 「海印録」に副用言の語はなく、辞・体言に混在している。


数字
付け可

三続き可:一日㋣五里㋣十念、一谷㋣七十㋣三尺、十月㋣一筋㋣二間

打越可

七つ①一つ、十分①一対、百日紅①一騎当千

数字について

 元より数字は筆画も少なく、義も持たざれば、活字には類せず。



送り字 (「踊り字」「重ね字」「畳字」などと呼ばれる符号)
付け可

三続き可:度々㋣つゞれ
と㋣片足

打越可

さま
の①きぬ
の、

送り字に
ついて

 蕉門には、上下並べ、越も嫌はざる也。元、送り字とは、仝の字にて、木木を木仝、草草を草々、一日一日を一日〃〃。一月一月を一月/\、と略するのみ。



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