貞享式海印録巻四 植物・生類

貞享式海印録 巻四④ 索引
植物木草、越、嫌はず木類、二去草類、二去
非植物、同体草木に、越、嫌はず月の桂、月の花、非植物
木・草の字、各三去松・竹、五去枝・葉、五去
苗・根・菜、面去穂・実・種、面去薮・柴、面去楓紅葉、面去
一巻一句の植物栄枯にて、一巻二つの植物、折去
生類異生類、越、嫌はず同生類二去生類、付句
鳴子類に生類、網に魚鳥、越、嫌はず非生物、同体生類に、越、嫌はず
鳥の字、三去虫の字、三去馬に馬士、五去馬、面去
馬異体、二去干支、面去犬・牛、折去羽・尾・鶏、面去
蜂、同季、折去。異季、面去蚊、折去魚・鯰、折去
貝類、面去一巻一句の生類盛衰にて、一巻二つの生類、折去
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貞享式海印録 曲斎述   安政6年(1859)序

 芭蕉の伝書という、「貞享式(別称二十五条)」をもとに、芭蕉俳諧の実例を根拠として、通則を見いだして記録したものである。

 このページでは、巻四、木草・生類を見る。


貞享式海印録 巻四

植物

□ 木・草、越、嫌はず。(古へは二去)       ↑ トップへ

[一]
百韻
此梅に

三ウ12  ┌ 浪に芦垣仕つたり      翁 ※つかまつったり
三ウ13 花│時は花入江の雁の中がへり   信章
三ウ14  └ やはら一流松に藤巻     信章 ※やわら、柔術

[古拾]
のまれけり

第三   │菊やどの家に久しき雁鳴いて  翁
初オ4  │ 酒舟あれば汀浪こす     春澄 ※みぎわなみ越す
初オ5  │碓の音いそがしの松の風    似春 ※からうすの

[虚栗]
詩あきんど

初ウ1  │恥しらぬ僧を笑ふか草薄    翁
初ウ2  │ 時雨山さき傘をまふ     其角 ※山崎からかさを舞う
初ウ3  │笹竹のどてらを藍に染めなして 翁

[雪丸]
[金蘭]
星今宵

名ウ4  ┌ 鎌とぎ習ふ里の草刈     石雪 右雪
名ウ5 花│俳諧を尋ねて花の窓に入り   翁
挙句   └ み木を取まく梅のひこ生   曽良

※ [雪満呂毛]の名ウ4は、
       笈を下せるさとの物陰    右雪
である。[金蘭集]は、「懐紙のまま」として、両句を載せる。

[さる]
市中は

初ウ1  │草むらに蛙こはがる夕間暮   凡兆
初ウ2  │ 蕗の芽取りに行灯ゆりけす  翁  ※あんど
初ウ3  │道心の発りは花の莟む時    去来 ※おこり

[草刈]

     ┌ 文箱の中もよそにしら菊   林陰
     │供人の門にさゝやく夕月夜   野棠 ※もんに
     └ 紅葉狩かと笛の聞ゆる    和丈

[水仙]

     ┌ 竹に明りの届く明星     野坡
     │繋ぎ合ふ手も美しき花見して  兎白
     └ 分取りになる駕の山吹    杏雨

[六行]

     │肩衣は御礼申の花の春     藍水
     │ 寒解したる橋の水嵩     倚松
     │吹乱す城の外側の菜種畑    一楓

[旭川]

     │夕日さす花は西谷東谷     素川
     │ 知つた自慢の何呼子鳥    波調
     │山吹は枕詞の鮒鱠       杯舟

△ 木類、二去。(古へは三去)㋬       ↑ トップへ

[冬]
はつ雪の

初ウ8  ┌ 月は遅かれ牡丹盗人     杜国
     │ 二
初ウ11  │初花の世とやよめりの厳しく  杜国 
※集「嫁(よめり)のいかめしく」

[鶴]
百韻
日の春を

初ウ4  ┌ 敵よせ来たるむら松の声   千里 ※集「よせ来る」は「よせくる」か
     │ 二
初ウ7  │憎まれし宿の槿のちる度に   文鱗

[一橋]
有が中に

初ウ2  ┌ 軍語りの松の十抱      清風 ※とかかえ
     │ 二
初ウ5  │梅ちりて花さく迄の眠たさよ  一晶 ※集「ねぶたさは」

[鎌]

名オ10  ┌ 松の嵐を中ごしに受け    冠那 ※集「中腰に」
     │ 二
名ウ1  │木犀の匂ひはさめず村雨て   佐角

[続花]
盂蘭盆や

初オ5  │常盤木も小高き城の青嵐    湖十 ※集「常盤木に」
     ├─三
初ウ3  │神木の松を柱の荷ひ茶屋    里郷

[越]

     ┌ 起きてさびしき松の白雪   貫仙
     │
     │御法事も過ぎて紅葉に露時雨  陸夜

[梅十]

     │鍋取も公家の流れの野梅哉   有琴
     │
     └ 舟はあちらに見ゆる松陰   七雨

[俳]
さぞな都

二オ6  ┌ 三十三年杉立てる庵     信章
     │ 二
二オ9  │いろは歌槙たつ山もなかりけり 信章 
※集「いろは韻」、いろは引辞書。

 此の如く、相似たる様に見ゆる例もあり。

△ 草類、二去。(古へは三去)㋬       ↑ トップへ

[冬]
つゝみかねて

第三   │歯朶の葉を初狩人の矢に覆て  野水 ※集「負ひて」
     │ 二
初オ6  │ 茶の湯者をしむ野べの蒲公英 正平
     ├─二
初ウ3  │露萩の角力ふちからを撰ばれず 翁

[冬]
霜月や

名オ5  │殊にてる年のさゝげの花もろし 野水
     │ 二
名オ8  └ をるゝ蓮の実立てる蓮の実  翁  ※折るる

[蓬]
海くれて

初ウ2  ┌ 一りん咲きし芍薬の窓    東藤
     │ 二
初ウ5  │霊芝掘る河原遙かに暮懸かり  東藤

[印]
[金蘭]
五十韻
ぬれて行や

名オ13  │入山の茨に落ちしうき泪    曽良
     ├─二
名ウ2  └ 甲は笹の中に隠して     翁  ※集「かくれて」

※[印の竿]は、五十韻初折22句のみ。[金蘭集][一葉集][袖珍抄]に50句を載せる。

[俳]
五十韻
暁や

名ウ8  ┌ 思はぬ方の欵冬をつむ    風麦 ※やまぶきを摘む
     │ 二
名ウ11  │引きかつぐ菖の階子重たげに  土芳 ※あやめの

[一]
百韻
須磨ぞ秋

二オ5  │お夜詰に這ひまつわりし蔦蔓  似春 ※集「はひまつはりし」
     │ 二
二オ8  └ 芦のまろやにうつせ有りけり 翁  ※集「うつけありけり」

△ 非植物、同体草木に、越、嫌はず。(七部及多省)       ↑ トップへ

 草の属にては「田畑の植物」は、摘刈ては穀菜と成り、「苗代青田の類」は場に属し、「種蒔・稲刈等」は態芸にて、「草枕」は旅体、「草の戸」は居処、「綿類」は衣の属也。
 又、木の属にては「伐割し物」は薪材とし、「菓類」は食物に入る。
 「椋鳥・樫鳥」の類は生類なれば、字義にも拘はらず。
 「梅の宮・梅の木村の類」は地名、「門松・柴垣・柴庵」は居所部に入る。
 「薮」は弥生(いやふ)の約、「林」は使生(はやし)なれば、偕に木草の生立をいふ名也。「森」は「諸・村・群・叢」も同義にて、木の集生したる名也。此三つ無名なるは、只場としたり。
 但し、「竹薮・梅林・松杜」と云ふは、勿論植物也。

 凡て、「花葉賞玩の物」は、切ても、植物とするは、称美の花を植物に扱ふ同例也。
 さて、「古式」に、「竹の子・木の子は季をもつ故に、煮ても植物」と云ふは、あやしきさた也。

[射]

     │一手ある二上山や菊の花    北枝
     │ きりの晴間をそよぐ西風   野角
    稲│稲塚の階子しまへば月の出て  十丈

[ひな]

名ウ4  ┌ 咄しとぎれて休む草取    千川
名ウ5  │此春はいつより早き花の陰   翁
挙句 苗代└ 蛙のせいの見ゆる苗代    遊糸 ※集「丈の」

[韻]

     │そよそよと麻に風たつ夕まぐれ 李由
     │ 腮に狭みて〆める褌     許六 ※あごに
   草枕│豊島蓙一枚持ちて草枕     徐寅 
※てしまござ

[続虚]
四十四
旅人と

名オ9  │朝顔や石ふむ坂の日に凋れ   全峰 ※集「日にしをれ」
名オ10  │ 小畑さびしき案山子作らむ  枳風
名オ11草戸│草の戸の馬を酒手に押へられ  翁

[次韻]
百韻
春澄にとへ

三ウ13  │草の奥下妻が原に暮れかゝり  才風 才丸 ※しもづまがはら
三ウ14  │ 狄の里の足洗鍋       其角 ※えびすのさとの
名オ1 芦│配所人芦の小忌布を干しかねて 翁  
※はいじょびと。集「小着布(こぎの)」

              

[深川]
青くても

第三  薪│暮の月槻のこつぱ片よせて   嵐蘭 ※けやきの木端
初オ4  │ 坊主頭の先に立たるる    岱水
初オ5  │松山のこしはつゝじの咲渡り  洒堂 ※腰は躑躅の

[桜山]
[東西夜話]百韻
山伏の(浪化)

名オ14  ┌ こゝらの藤を夏に眺むる   何悦
名ウ1  │坂越ゆる坊主は牛に極まりて  支考
名ウ2 菓└ いせ路の柿の五介迷惑    許六

[文操]
短歌行
香久山の

名ウ1樫鳥│出代りも宿樫鳥の音を鳴いて  蓮二 ※かしどり、ツグミ
名ウ2  │ 重はさびしき赤の俤     方堅 壺峰 ※じゅうは
名ウ3  │幕一重花に吉のゝ奥もあらず  乙文

[文操]
歌ときけ

名オ7梅宮│明暮に詣でゝ仰ぐ梅の宮    正珍
名オ8  │ 鮓のかげむの一子相伝    蓮二
名オ9  │さく頃と告げやる友の花に来て 光純

[西花]

     │夕月にさて面白い土堤の松   竿水
     │ 萩咲きかゝる仮の雪隠    万水
   梅木│梅の木の薬を買ひに一走り   吐雲

[むつ]

   門松│門松を買納めても春めかず   朱角
     │ 母を画にかく山寺の児    独笑
     │月や空花の鏡の水呑みて    助叟

[桃盗]

     │冬さけば冬面白し梅の花    音吹
     │ 御簾に雪ちる御所の風俗   柳士
   門松│衣配り松の心の急がれて    秋の坊

[草刈]

     │干鮭に花こそさかね梅の花   浪化
     │ 紙衣の衿に唐おりの鉑    北枝
   柴垣│柴垣に掃部の介を呼入れて   万子

[次韻]
春澄にとへ

初オ8  ┌ 夜盗松風の音を相図に    楊水
初ウ1  │雨の闇にすけて敵を討たせたる 其角
 2 柴戸└ 舞台に柴の庵栞戸      才丸

[奥]

     ┌ 萩の簾を揚懸くる月     棟雪
     │炉烟の夕べを秋のいぶせくて  更也
    薮└ 馬乗ぬけし高薮の下     曽良

[さみ]

     ┌ 薮のあちらへ日はいるとかや 玉蘭
     │鯛よりも豆麩に安き花心    甫秋
    杜│ さみだれ山の杜の三月    露白

[新百]

    林┌ 林の中の家に火をたく    乙由
     │花は今星の光に咲揃ひ     支考
     └ 新百韻の柳鴬        執筆

△ 月の桂、月の花、非植物。       ↑ トップへ

[みかの]

   月桂│笙ふくは何ぞ三五の桂かげ   素浅 
     │ さなきだに秋独りるすして
     │もろきとは合点ながらも垣槿

[星月]

     │朝鮮の詩に誉められし藤咲いて 千梅
     │ 薬の名代売弘めたり     松人
     │嫁取に桂のかげの謡声     松三

[十七]
百韻

名オ14  │いざよひや花の桂の歯落の賦  竿松 竿秋 ※しらくのふ、羅山作
名ウ1  │ 螽の命をおとす羹      呉舟 ※ぎすの、集「螽斯の」。あつもの
名ウ2  │蔓いちご向ふへぬくる石の穴  梨花 梨盤 ※つる苺。集「ぬける」

[十七]

初オ5  │ふく物もなし国の色月の花   雷之 ※集「吹くものも」
初オ6  │ 単の簾冷気つくらふ     執筆 
※集「ひとへの簾冷気つたらふ」
初ウ1  │川波を袈裟にくれても朝の萩  丈水

△ 木・草の字、各三去。       ↑ トップへ

[ひな]
芹燒や

初オ4  ┌ 折々涼む裏の柿の木     翁
 木(き)│ 三
初ウ2  └ 榎木の末に残るしめ縄    濁子

[ぶり]

     │柿木の近江といふは弘い事   竹司
     │
     │時を得て老木の花も算へられ  蒲右

[瓜]?

     ┌ 疇のさし木も木屋の咲時   可之 ※あぜの
     │
     └ 待つた祭に眠る木の股    如本

              

[次韻]
五十韻
鷺の足

初オ7  │微雨ゆく麻から山の木の間より 楊水 ※こさめ行く
 木(こ)├─三
初ウ3  │木嵐の乞食に軒の下をかす   才丸 ※集「凩の」

[四幅]

     │青々と川の向ふの夏木立    月狂
     │
     │秋は皆木葉となりてちりぢりに 梨月

              

[俳]
百韻
錦どる

初ウ5  │袖桶に忘ぬ草の哀れをり    千春 ※集「哀折る」
    草│ 三
初ウ9  │行脚坊そとばを夢の草枕    翁

[さる]

第三   │二番草取りも果さず穂に出でて 去来
    草├─三
初ウ1  │草村に蛙こはがる夕まぐれ   凡兆

[一]
[梅さが]
ながき名を

初ウ9  │いそがしく草起上がる雨づかひ 渭川
    草│ 二
初ウ12  │ 角力咄で草臥るゝ也     三惟
    草├─三
名オ4  └ 畳のはしの暑き夏草     園女

[初茄]

名ウ2  ┌ 刀に帯のゆるむ草臥     芦錐
    草│ 三
挙句   └ 草芳しき奥の細道      執筆

△ 松・竹、五去。(古今同)       ↑ トップへ

[一]
百韻
梅の風

三オ14  ┌ 漸うこゆる末の松山     信章 ※集「土手の松山」ともじる
    松├─五
三ウ6  └ 何とて松はすねて見ゆらむ  信章

[東六]

初ウ5  │碓の音を隣に路次の松     夕市 ※集「からうすの」
    松│ 五
初ウ11  │松かげに座敷めかしてすのこ縁 夕市

[俳]
百韻
錦どる

三オ7  │松髪の祖父蔦上下に出立ちて  麋塒 ※じいつたかみしもに
   松㋬│ 三
三オ11  │世捨木や世捨の松に名を朽ちて 其角

[桃]

     │八景も九景も松の間から    海人
    松├─六
     └ 松には声の藤に夕凪     未因

              

[俳]
松茸や

初ウ11  │初花の垣に古竹結廻し     惟然 ※集「結わたし」
     ├─五
名オ5  │二三本竹切たればかんかりと  支考 
※集「切(きっ)たればかんがりと」

[小文]

     ┌ なぐれて雪のかゝるから竹  山店
     ├─六
     │ふしん場で拵へて来る火吹竹  嵐竹

[壬]

     │寒竹の杖の節よむ老のわざ   苔蘇
     │ 四
     └ 琵琶の謂れをかたる竹縁   風麦

 松・竹は五去歌にあり。無季の植物、此例也。

△ 枝・葉、五去。       ↑ トップへ

[みかむ]
五十韻
松風に

名ウ7  │枯れもせず太るともなき楠の枝 卓袋
     │ 五
名ウ13  │雪隠の窓より覗く花の枝    猿雖

[別座]

初オ6  ┌ 脇よりこゝは赤い蔦の葉   子祐
     ├─三 ※面去
初ウ4  └ くぼい所へ木のは吹こむ   子珊

[類]

     ┌ 同じ枯葉に杉の実の色    其角
     ├─四 ※面去
     │葛の葉の伯父貴の撫でし裏若み 昌美

△ 苗・根・菜、面去。       ↑ トップへ

[句餞]

     ┌ 根松苗杉蝉のなく声     濁子
    苗├─九
     └ 苗代もゆる雨こまか也    嵐雪

              

[売]

     │ちる花に垣根をうがつ鼠宿   嵐雪 ※ねずみじゅく
    根├─七
     │長門より西の咄の根問ひして  翁

[むつ]

     │根を分けて牡丹を移す石の間  桃隣 
    根├─十
     │ 塀に根ざしの慥かなる桃   己応

              

[さる]

発句   │梅若菜まりこの宿のとろゝ汁  翁
    菜├─十六
初ウ12  │ 灰蒔きちらす芥子菜の跡   凡兆 ※からしなの

[深川]
口切に

初ウ4  ┌ 懸菜春めく打豆の汁     翁  ※かけな=干菜。集「打大豆(うちまめ)」
    菜├──二十五
挙句   └ 麦と菜種の野は錦也     利合

△ 穂・実・種、面去。       ↑ トップへ

[草刈]

     ┌ こしかけ酒に門の穂薄    野棠
    穂├──十四
     │葭あしの穂に出て恋の花はなし 秋青

              

[続花]

名オ5  │塩漬も始めて日見の桜の実   老鼠
    実│ 五 ※同面、実-実る
名オ11  │人しれず秣の実のる後夜の月  湖十 ※まぐさの

[一橋]

     ┌ 種まく人の帰る片原     清風
    種├──
     │夕顔の種とる頃に成りにけり  清風

△ 薮・柴、面去。       ↑ トップへ

[汐]

     ┌ 虎もすまずて薮の百丁    白庭
    薮├─
     └ 桃の光をそへて薮陰     執筆

              

[続虚]

     ┌ 月には許せうき柴の数    破笠
     ├──
     └ 柴の戸深く維摩きくらむ   其角

△ 楓に紅葉、面去。       ↑ トップへ

[古今抄]

 桜も楓も花と紅葉には、面を去りて、只一つあるべし。

▲ 証句得ざれども、さるべき理也。

△ 一巻一句の植物。(百韻にても) ㋬       ↑ トップへ

[古今抄]

(芽柳・青柳・葉柳、異名の内にて一)。
(早咲・寒梅・紅梅・匂ひ草・花の兄の内一)。
椿(冬椿・玉椿、異名の内一)。
(ひがん桜・いせ桜・山桜・やへ桜・吉野草・化名草の内一)。
(ひ桃・白桃・やへ桃・みきこ草・みちよ草等の内一)。
山吹(俤草にかへても)。  若菜(二字もの)。
燕子花(顔よ花・花の君、と異名にかへても)。
牡丹(冬牡丹・深見草・廿日草、のうち)。
(青楓・若楓としても)。  紅葉(柿・梅・蔦等の名ある物にても)。
(夏菊、花の弟等の異名にかへても)。  芭蕉(二字)。  水仙

 右の類、異名にかへ他季にかへても、同物なれば、一座に二つは、決してせず。又、二三字合うたる名は、殊に重し。

△ 栄枯にて、一巻二つの植物、折去。(歌仙は無印)       ↑ トップへ

[古今抄]

(春一、帰一)。(春夏の内一、秋冬の内一)。(夏秋の内一、残枯の内一)

 此類、一字題の物。栄枯盛衰の観あれば、其名を其儘に、一座に二つ許せり。

▲ 古式は、一巻を二度に調ふる時は、一座一と云ふ嫌物を、二つ許せり。
 蕉門にて、一座一と云ふは、一巻の事にて、百韻も歌仙も同じ。一巻を二度にすとて、別に許さゞるは、凡て古式より制寛く(ゆるく)、許すべき物は、二座ならでも、かねて二つも四つも許したる故也。

[根本]
百韻

    冬┌ 汝桜よかへりさかずや    翁
     ├───
    春└ 桜々の奥深き園       執筆

              

[其鑑]

    秋│ちり果てゝ柳に月の取残し   千中
     ├──
    春└ 千年の名に松も柳も     其由

[旭川]
長歌

    秋│一葉とて蔦も柳も桐のはも   里可
     ├──
    春└ 旭の川の水の青柳      波調

              

[鶴]
百韻

三ウ2 春┌ 梅は盛りの院々の閑     似春 千春 ※集「院々を閉(とず)」
     ├─十五
名オ4 夏└ 梅まだ苦き匂ひなりけり   コ斎 ※梅の実のこと

[浪化]

    春│早咲の梅は机の相手にて    知足
     ├─
    夏│夕べのあれに落ちた青梅    山之

              

[十七]

    春│明星や桜定めぬ山かつら    其角
     ├─
    秋│筆も桜の紅葉にて見る     春楽

              

[古拾]

    夏│青ばより紅葉ちりけり旅きせる 似春
     ├──
    秋│あみ楊枝昨日は峰の薄紅葉   春澄

              

[渡]

初オ6  ┌ そばの花さく岡の白妙    先放
     ├──二十
名オ10 異└ 一膳残るそばのあぶなき   卯七


生類

□ 異生類、越、嫌はず。       ↑ トップへ

[古今抄]

 俳諧は、只日用の咄にて、一座の人和(じんわ)を扱へば、折節は、馬の打越にまざまざしき牛ありとも、「其日の時宜にや」と見許すべし。

[続寒]
五人ぶち

名ウ4  ┌ 猫かはゆがる人ぞ恋しき    野坡
名ウ5  │あの花の散ぬ工夫があるならば  翁
挙句   └ 掃目の上に色々の蝶      やは 執筆

[桃]

     ┌ 犬を相手に遊ぶお小僧     桃里
     │吸物は後にうどんの膳上げて   野洞
     └ 伏見の雁を二階からきく    由之

〔白鴉〕

     │是は又山鳥の尾の長短      琴工
     │ 悟りでゆかぬ寺の談合     左梅
     │古へも猫の踊つた例しあり    里楊

[みの]

名ウ4  ┌ 松に巣を守る蝙蝠の千代    麋塒
名ウ5  │俳諧の空死花の浮狂人      一晶 ※集「そらごと」。うかれびと
挙句   └ 馬蹄に鼓送る春風       翁

△ 同生類二去。(古へは三去)       ↑ トップへ

[一橋]

名オ5  │耳疎く妹が告げたる時鳥     翁
    鳥│ 二
名オ8  └ 我がうつ鷹を殿の御拳     其角 ※うつ=生捕る。みこぶし

[俳]
[横日記]
五十韻
暁や

名ウ3  │鷹の爪胝寒くなくならむ     半残 ※集「あかがり寒く鳴ぬらん」
     │ 二
名ウ6  └ 雉々迯るなこはい事なき    土芳 ※集「逃そ(にげそ)」

[ひさご]

初ウ10  ┌ 独ある子も矮鶏にかへける   珍碩 ※ひとり有るこもちゃぼに換え
     ├─二
名オ1  │雲雀なく里は厩肥かきちらし   正秀 
※まやこえ掻き散らし

[山琴]

     │精進に落ちかゝりたる雁の声   秋の坊
     │
     └ 出てゆくるすを頼む乙鳥    巴兮

              

[市の海]

    虫│小酒屋の蝶来て休む酒もなし   路圭
     │
     └ 汐さす砂に飛びし蟷螂     路圭

              

[花摘]
有難や

名オ6  ┌ 妻乞するか山犬の声      翁  ※集「妻恋するか」
    獣│ 二
名オ9  └ 鼯の音を狩宿に矢を矧ぎて   釣雪 ※むささびの

[春と秋]
衣装して

初ウ5  │振上げて杖あてられぬ犬の声   路通
    獣│ 二
初ウ8  └ 月も今宵と見む馬の市     翁  ※集「駑馬の市」

[市の庵]
柳小折

名オ7  │追込の綱を鼠のならす音     素牛 洒堂
    獣│ 二
名オ10  └ 手拭脱いでおろす牛の荷    支考

[枯]
今はくも

名ウ1  │声もなく朝の鹿の小草はむ    神叔
    獣│ 二
名ウ4  └ 走りながらに牛よべる声    介我 ※集「除る(よくる)声」

[あめ]
蓮葉の

名ウ3  │海老売のをかしき顔もけふは来ず 之道 
    介│
挙句   └ 桃の節句や二見蛤

[江戸]

     │黒き事油より猶せ切鯉      虎月
   魚介│
     │たらひの田螺音をのみぞきく   虎月

△ 生類、付句。(多省)       ↑ トップへ

[俳]
百韻
さぞな都

三ウ7 鳥│山雀の柿褌に尻からげ      信徳 ※柿色の褌
三ウ8 鳥└ 青茶の目白羽おり着てゆく   翁

[初茄]
めづらしや

名オ8 虫┌ 蝸牛のからを踏潰す音     呂丸(露丸、ろがん)
名オ9 虫│身は蟻のあなうと夢や覚めつらむ 翁

[浪化]

    魚│白魚のげに面白き料理組     何由
    介└ 雲丹は黄色に防風紅      執筆 ※つまの浜防風、茎が赤い

[誰]

    獣│郷中のよめりふるゝは狢にて   嵐雪 ※むじなにて
    獣└ 思ひまさるとなく直宿猿    其角 ※とのい

△ 鳴子類に生類、網に魚鳥、越、嫌はず。       ↑ トップへ

[古今抄]

 鳴子は、稲を守る故に、植物に二句去とや、いかなる意の連びにや、此等は生類に二句さるべし。網に魚鳥を二句さる例也。

▲ こは、古式を難ずとて、筆過しけむ。蕉門には、さるせんさく、論なき事は、支考捌きの例にてしるし。

[天河]
翌日を

名ウ3  ┌ 山も案山子を笑ふ苗代     曽路 曽呂
名ウ5  │花守も祢宜の時にはゑぼしきて  蘭路 ※集「烏帽子着て」
挙句   └ 梅にさはらぬ鴬の笛      執筆

[皮篭摺]
干瓜も

脇    ┌ 鳶のうねりを残す桐のは    凉菟
第三   │月の簗けさはざんざと水落ちて  凉菟 ※やな
初オ4  └ 里の後に鳴子ゆふ薪      ロ遊 ※
うしろに。集「結薪(ゆうまき)」

△ 非生物、同体生類に、越、嫌はず。       ↑ トップへ

 非生類と云ふは、「雷鬼の怪物」「水を放れし魚類」「狩の鳥獣」「田むし類の病名」「干支」「絵・彫物の生類」「喩物」「枕詞」「名所」「器財の生類名」「蚊屋」「馬士(ばし、うまかた)」の類也。

[三]
半歌仙
たび寝よし

ウ7  雷│夕立の先に聞ゆる雷の声     楚竹
ウ8   │ 馬もありかぬ山際の霧     東睡
ウ9  獣│さを鹿の翦矢を袖に射付させ   翁  ※それや、逸れ矢

[其袋]
菊の香や

初ウ11 畜│装束の百馬揃へる花の山     百里
初ウ12  │ 栄える藤は門の客人      嵐雪 
※集「さかゆる」。まろうど。
名オ1 鬼│感じては鬼が詩をつぐ春の雨   其角

[このは]

    雷│凩にまぜて雷狩出し       何容
     │神の射捨の矢の根尋ぬる     化明
    鬼│鬼になる合点で丑の時参り    和琳

[古拾]

発句  狩│塩にしていざことづてむ都鳥   翁  ※集「塩にしても」
脇    │ 只今のぼる波の味鳧      春澄 
※集「あぢ鴨(トモエガモ)」
第三   │川淀の杭木や竜の伝ふらむ    似春

[拾]
箱根越す

初ウ5 狩│どやどやと還御の後に鶴釣りて  荷兮 ※如行子「鶴おりて」
初ウ6  │ 誰やら申出す念仏       越人
初ウ7  │忍び入る戸を明かねて蚊にくはれ 野水

[やへ]

     ┌ 近付く中に馬の爪打      示右
     │年々の花を武運に開かせて    言水
   干支└ 藤のめでたき丑寅の神     示右

[蓬]
海くれて

初ウ8  ┌ 秋の烏の人喰ひにゆく     翁
初ウ9  │一昨日の野分に浜は月澄みて   工山
初ウ10 絵└ きりの雫に竜を書きつぐ    東藤

[天河]
相むかふ

名オ8  ┌ 馬屋の蝿の二階迄来る     有琴
名オ9  │寝道具の崩れぬ様にしゆろ箒   童平
名オ10 喩└ 髪ゆふうちも只あかき猿    鷹仙

[歌]
松茸も

初ウ6  ┌ 猫盗まれて後生一ぺん     山只 ※ごしょういっ遍
初ウ7  │粟飯のさがなつかしき夕月夜   胡仲 ※嵯峨
初ウ8 喩└ 狐仲間のぞめく薮入      風草

[旭川]

     │鼠よりかつをに猫の二心     杯舟
     │ 殿の威光は砂に箒目      義文
   名所│星も尾を引行く月の狐川     里可

 かく作意を付けても、生類にならず。

[桃]

   蚊帳┌ 木賃の蚊屋の外も同前     吟志
     │三上から鏡へ月の明渡り     鉄左
     └ 案山子の弓は雁も合点     夜航

[射]
一手ある

初ウ11馬方│馬士も泪こぼして立別れ     北枝 ※うまかたも
初ウ12  │ ねぶの暑さの現なき花     野角 ※集「合歓(ねむ)の」
名オ1  │木綿幣に祓過ぎたる鷺の群    十丈 ※ゆうしでに

 異生、打越の例は、夥しけれど、略す。

△ 鳥の字、三去。(古へは面去)       ↑ トップへ

[拾]

     │めきめきと川より寒き鳥の声   野明
     │
     │花の香に鳴かぬ小鳥の幾群か   翁

[俳]
松茸や

初ウ9  │庭鳥の白きは人にとらせけり   卓袋 ※集「鶏の」
     │ 三
名オ1  │はらはらと雉に小鳥のおどされて 卓袋 ※集「ばらばらと」

[誰]

     │大判の名も珍らしや金衣鳥    才丸 ※きんいちょう、鴬の異名
     │
     │水鳥の酒の接待立止り      其角

[浪化]

     ┌ 人の噂に鳥の囀る       八紫
     │
     │風のない日は尾長鳥とぶ     一甫

[夕顔]

     ┌ 又飼鳥の寄りかゝる石     円入
     │
     └ 其夜はくわらり棟に庭鳥    宰陀

△ 虫の字、三去。       ↑ トップへ

[梅十]

     ┌ 色も五色にかざるむし干    梅光
     │
     └ 乱るゝ鶏にむしも鳴きやむ   仲志

△ 馬に馬士、五去。       ↑ トップへ

[皮篭摺]

     ┌ 月に見すかす馬の寝姿     轍士
     ├─五
     └ 馬ふんにすべる老の市立    杜若

[韻]

名オ6  ┌ 馬がはなれて菅笠をくふ    李由
     │ 四
名オ11  │後先にだんだと通る十駄物    米巒

[桜山]?

     │馬乗の明いた羽おりは五器鱠   野航
     │ 四
     │荷を付けかふる宿の馬士     右範

[初茄]

     │嵩高な荷物に馬士の飲構へ    宗路
     ├─七
     │流鏑馬に祭の子供あぶながり   新古

△ 馬、面去。       ↑ トップへ

[三匹]

     │ありかねば馬の上には居憎し   汀芦 ※おりにくし
     ├─十
     └ 馬がゆくかと橋を見てゐる   汀芦

[このは]

     ┌ 煩ふ馬の閘に火をたく     孟遠 ※「閨(ねや)に」
     ├─十
     │風次第馬士なし馬のほくほくと  甫什 ※「ぼくぼくと」

[皮篭摺]

初ウ10  ┌ 菰を田鞍に望月の駒      其角
     ├─十二
名オ11  │足取も皮盗まれたあし毛馬    ロ遊

[俳]

     │馬のくらふまへて手をる桜花   梅額
     ├─十二
     │葬礼にしほるゝ馬の哀れ也    良品

△ 馬異体、二去。       ↑ トップへ

[翁]
朝顔や

初ウ6  ┌ 絵馬を懸くる年越の宮     魯可
     │ 二
初ウ9  │鉄棒を戸塚の宿の伝馬触     魯可 ※かなぼう。てんまぶれ

[類]

初ウ10  ┌ まる馬出しに成し踊手     止斎 ※「丸うまだし」のような半月状
     │ 二
名オ1  │初午にのれんの狐目だつ也    其角

[桃白]

     │篭ふせの駒鳥おどす篠の陰    太舟
     │
     └ 手綱ひかへて馬の順くる    此筋

△ 干支、面去。       ↑ トップへ

[やへ]

     ┌ 嫌付いたる丑寅の角      我黒
     │ 六
     │寅鐘の夢もきれいな板畳     示右

 同字なれども、時刻と方角の違ひあり。

△ 犬・牛、折去。       ↑ トップへ

[花摘]
有難や

初ウ11  │まつはるゝ犬のかざしに花折りて 呂丸 ※集「露丸」
     ├─六
名オ6  └ 妻乞ひするか山犬の声     翁

[このは]

     │牛どもを繋いでさがの花盛り   石介
     ├──
     └ 生れ牛子のはひるせと口    越只 ※うまれべべこの

△ 羽・尾・鶏、面去。       ↑ トップへ

[諸書]

 羽の字、面をかへて三。鳥羽・音羽は、此外なりと云ふ。

[続花]

     │照月や馴れたる犬は尾を振りて  老鼠
     ├─五
     │雨の後しばし尾長の尾の雫    湖十

[桜山]

     │さびしさを神もお好きの鶏の声  之通
     ├─
     └ 向ひの鶏のこちにゐたがる   斗牛

△ 蜂、同季、折去。異季、面去。       ↑ トップへ

[拾]

発句  夏│牡丹蘂を深く這出づる蜂の別れ哉 翁  ※1
     ├─七
初ウ3 秋│竹蜂の尖き月の夕嵐       叩端 
※たけばち※2

※1 発句
 [夢の跡]牡丹蘂深く這出る蝶の別れ哉   /初オ4以下名前なし。
 [三歌仙]牡丹蘂分けて這出づる蜂の名残哉 /発句のみ。
 [一葉集]牡丹蘂を深くはひ出る蝶の別哉
※2 「竹蜂」は漢名で、漢方薬の原料となる蜂。和名は不詳。クマバチの近縁種で、竹穴に巣を作る。

△ 蚊、折去。       ↑ トップへ

[夕顔]

     ┌ 雨のくもりに昼蚊寝させぬ  翁
     ├─十五
     └ 暑気によわるみな月の蚊帳  尚白

[難]

 略

[桜山]

     ┌ 紙帳もいらず残る蚊の声   長緒
    蚊├───
     └ 蚊遣ふすべて出たる裸身   為花

△ 魚・鯰、折去。       ↑ トップへ

[桜山]

     │魚とらぬ川のあたりの淋しさよ 桃妖
    魚├─十四
     └ よんだばかりにかはぬ魚売  鳥水

[別]

     │秋の水畚に鯰を引上げて    滄波 ※ふごに
    魚├─十四
     └ 洲走とれて鯰丸やき     滄波

△ 貝類、面去。       ↑ トップへ

[鵆]
星崎の

初ウ6  ┌ 月を干したる螺貝の酒    翁  ※集「螺(ほらがい)の」
     ├─六
名オ1  │辛螺殼の油流るゝ薄氷     如風 ※にしがらの

※ 生類まとめ

 以上の生類、取合せては、歌仙に十ばかり。又、鳥類ばかり出て、別生の出ぬ巻もあり。近世、「前に鳥あれば、爰は魚類よからむ」、「獣出でたれば虫」などゝ、物柄のさしくりするは、大なるひがごと也。

△ 一巻一句の生類。       ↑ トップへ

[古今抄]

(経よみ・歌よみ・匂ひ鳥・笹鳴・付子の内一)
喚子鳥(かほ鳥・杲鳥・かほよ鳥・かんこ鳥・同物なれば、其の内一)
百千鳥蝸牛(でゞむしとしても)
時鳥(しでの田長・不如帰・橘鳥・恋し鳥等の異名にても)
水鶏
鶺鴒(いなおほせ・庭たゝき・真木柱・にはくなふり、一鳥なれば、其のうち一)
(筆つむし・ちゝろむしとしても)
松むし。又、狐・狸・鬼・虎・竜・雷・天狗の類。

 右の類、異名にかへても、一座一つ也。殊に、二字三字会合の名は、弥目だつ故に、決して二つはすまじ。

△ 盛衰にて、一巻二つの生類、折去。       ↑ トップへ

[古今抄]

(冬・春の内一、老・乱の内一)
(夏一、残一)
雁・燕(帰一、来一)
(冬・春一、夏・巣一)

 此類、盛衰にかはりて、其名をそのままに、二つは許せり。

[俳]
百韻
あら何共なや

二ウ14 春│名残の雁も一くだりゆく    信章
     ├────四十二
名ウ1 秋│物の賭振廻にする天津雁    信徳 
※ふるまい

[俳]
百韻
さぞな都

初オ6 秋┌ 雁よちどりよ阿房友達    翁
     ├───────九十三
挙句  春└ 唐土へ帰る羽箒の雁     執筆 ※はぼうき

[一]
百韻
物の名も

初オ6 秋┌ 水衣を笑ふ初雁の声     信章 ※集「水右(みずえ、水右衛門)」、動物使
     ├──十六
二オ1 春│天津雁借金なして帰りけり   翁  
※済して(なして)=返済して

 以上は百韻の例、以下は歌仙の例。

[砂川]

     ┌ 雁より鳧の早う来てゐる   野明
     │抱き込て松山広き有明に    支考
     ├─
     │ ちらちら鳥の渡り初めけり  野明
     │朝の月起々たばこ五六ぷく   諷竹

 二句ともに「月前」の渡鳥なれど、作異なる故に、よし。

[鳥劫]

    夏┌ 川瀬を走る年魚の献立     芙雀
     ├───
    春│しよろしよろと小鮎少走る小石川 芙雀 ※さばしる

 同作なれども、献立に意(こころ)の違ひありて許したり。

貞享式海印録 巻四④ 終り →「海印録、巻五 あて字」へ



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