貞享式海印録巻六 数字、送り字他

貞享式海印録 巻六① 索引
数字数字、異同、越嫌はず数字、三続
送り字送り字、越、嫌はず
飲食飲食かはり、越を嫌はず飲物、二去食物、二去
非飲食物、同体、越、嫌はず飲食、付句酒、同訓、面去
酒、音訓、飲・酢・樽・盃にかはり、五去飯、面去
飯、茶、其の器とかはり、五去茶、面去
餅、面去米、面去菓子・塩・油・肴、折去
薬類、面去湯、飲・浴・泉かはり、面去
衣類、二去非衣類物、越、嫌はず衣(ころも)に衣(こ)、三去
衣(ころも)・衣(きぬ)、五去袖・懐、五去袋・布、面去
器財異器財、越、嫌はず同体器財、二去笠・枕、五去
杖・箱・台・箸、面去荷・紙・簾、面去刀・弓類、面去
鐘・鉦・太鼓、面去車、面去金・銀・銭、音訓、面去。同訓、折去
金・銀・銭とかはり、五去草鞋・縄・俵・網、折去樽・蓋・板、折去
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貞享式海印録 曲斎述   安政6年(1859)序

 芭蕉の伝書という、「貞享式(別称二十五条)」をもとに、芭蕉俳諧の実例を根拠として、通則を見いだして記録したものである。

 このページでは、巻六、数字、送り字、衣類等を見る。


貞享式海印録 巻六

数字

□ 数字、異同、越嫌はず。(多例省)       

[古今抄]

 凡そ、数字も送り字も、耳目の変を先にして、文字の上にて咎むべからず。譬へば、一盃に山一つの如き、語路の拍子の耳に懸らぬは、二句以下に許すべし。

▲ かくいへども、支考捌きにも、同訓越多し。元より数字は筆画も少なく、義も持たざれば、活字には類せず。辞に類して越を許しけるは、蕉門の寛制也。

[韻]
秋もはや

初オ6  ┌ 早い七つの鐘のせんさく   利牛 ※穿鑿
初ウ1  │葬礼に傘は隣りへことつてゝ  野坡 ※集「ことづけて」
  2 つ└ 女房の酌で一つのむ也    許六 ※集「酌に」

[句兄]
二十二句
初鮭は

14    ┌ 尾張もいせも十分の秋    其角 ※集「十分の作」
15    │山柿の門に遊ばむけふの月   秋色
16    │ 霧に際つく一対の無垢    寒玉
17   い│折花をかわく莨に包み添へ   桂花
18    └ 四條で買たこの春の状    秋色 ※集「春の杖」

◆[桃盗]

     ┌ 百日紅も未だ初秋      山紫
     │吸物は松もどきとて柚の匂ひ  楚由
     │ これの男は一騎当千     巴兮
     │誰やらに惚れてとられし煙草入 柳士
     │ 濡の浮世に十夜しぐるゝ   音吹
     │腹たてば損のたつとよ商人衆  是通
    い└ 何と一盃よい燭にして    秋の坊

         ○

[市の庵]
五十韻
宵の間や

初ウ1  │幻住の二字は残りし額の板   委均
  2  │ 人の情を美濃で別るゝ    荘蘭
 3 音訓│ひすらこく浪は二見に打寄せて 執筆

◆[山琴]

     │鎌倉の春をもしらず四十迄   凉菟
     │ 堪へかねては章門をやく   秋の坊
   音訓│鐘きけば三つ四つ五つ七つ過ぎ 曽北

[皮篭摺]

     ┌ 一はな欠けて顔が踊る気   凉菟
     │御ざつたら只は置かぬぞ思草  凉菟
   同一└ 芋むし一つ蜘の振廻ひ    其角

◆[柿]

初ウ11  │一寝入して其の後は窓の月   丈草
     │ 虫も啼くらん妹も泣くらむ  呂物
   同一│質におく十二一重の歌よみて  范孚

◆[さみ]

     │息災な親父は一人釜の前    一宇
     │ 十夜は鐘に耳の極楽     壺秋
   同一│かも川も一せに月の冴渡り   魏芝

◆[山カタ]

     │火の端に秘蔵の猫も一人前   東羽
     │ 京の咄しも久しぶり也    六之
   同一│名人のまりに一入暮の月    酉跡

◆[四幅]

     │鶺鴒の其の尾に付いて又一羽  東恕
     │ たらひの雫立掛けてほす   凉菟
   同一│如在なき隣は遠い一家より   曽北

◆[夏衣]

     │女郎花五器にはもらぬ詩の心  南木
     │ 痰気に鼻は隠居してゐる   南木
   同五│調合は勘略五分ちゑ五分    支考

◆[桃]

     │五節句の外に月見もそはつきて 一酉
     │ 橋の掃除に川がよごるる   夏橋
   同五│入聟の源五兵衛謗る晒搗    自椎

△ 数字、三続。(歌仙一、百韻二所)(多省)       ↑ トップへ

[さいつ比]
[袖草紙]
重々と

初オ6  ┌ けふも一日蝉のなく椎    翁
初ウ1  │宿ありと五里程出づる家童子  立圃
  2  └ 老はみなみな十念をまつ   翁

[寒菊]
未巻三十二句
寒菊や

初オ6  ┌ この一と谷は栗の御年貢   野坡 ※集「此一谷(いちたに)は」
初ウ1  │七十になるを喜ぶ助扶持    翁  ※ななそじ。たすけぶち
  2  └ 三尺通り裏のさし懸     野坡

[だて]

名オ7  │行僧に三社の詫を戴きて    曽良 ※ぎょうそうに三社の託を。
  8  │ 乗合まてば明六つのかね   素蘭
  9  │四五日島鵯の音に馴れて    等躬 ※下注

※ [伊達衣]
名オ9  │伽になる嶋鵯の餌を慕ひ    等躬
名オ10  └ 四五日月を見たる蜑の屋   栗斎

[翁]

     │百石も位牌知行の有りがたき  沾圃
     │ 竹四五本で薮小路也     如流
     │一粒もきれいにふらぬ入梅の中 里圃

[枯]

発句   │十月を夢かとばかり桜花    嵐雪
脇    │ 時雨の中に一筋の香     氷花
第三   │鎰の手の二間は五畳々々にて  百里 ※かぎのてのふたま

[行脚]

     ┌ 梺の春に六々の人      午潮
     │蒟蒻の風雅も残る二三月    五桐
     └ 一度通つて見たきいが越   凉菟

[類]
鰒汁や

初ウ1  │一筋に仏の鼻とくさめして   丈松
  2  │ 思ひもよしや吐血三代    其角
  3  │熊坂と在五中将いへはえに   檀泉

[四幅]

     │八景を隣にもちて落雁屋    蓮一
     │ 二人の自慢橋で行きあふ   東恕
     │一手先見えぬ師走の将棋さし  佳木

[百歌仙]

     │貸しも貸す借も借たる銭五百  百丈
     │ ゐろりも出来る十月の寒   松浦
     │すごすごと二人連にて丹波越  五呑

[十七]

     ┌ 百歩を笑ひ課たる恋     酉枝
     │むつくりと起す植木の一嵐   秋高
     └ 児の手柏の三八日寮     雲魚

[文星]

     │一匹を繋がす程の御意に入り  丈志
     │ 島のもやうも四十八色    市虎
     │熱い茶をのむ間に通る三日の月 観水

[はの]

     │行きかぬる一分を汚す蝿のふん 雨橋
     │ 蚊屋とのぼりに二日路はなき 古井
  一二三│武士のさゝら三人すり払ひ   安士

[麦]

     │旅やつれかゞ羽二重の夫婦連  茂秋
     │ 日和はつゞく土用三郎    古山
  二三四│花ざかり机に明くる四季の段  麦林


送り字

□ 送り字、越、嫌はず。(歌仙十所迄)(多省)       ↑ トップへ

[古今抄]

 送り字は目だつ物なれば、三四句もさるべきにや。

▲ 略字を嫌ふは古式也。
 蕉門には、上下並べ、越も嫌はざる也。元、送り字とは、仝の字にて、木木を木仝、草草を草々、一日一日を一日〃〃。一月一月を一月/\、と略するのみ。仝の草書々、其の草〃。〃〃の草、/\なれば、真名仮名ともに、上一字には、〃と書き、上二字には/\と書き、三字には、〃/\とかく也。
 されども、二字以上は、皆/\にて済ますも、埓明くならむ。さるに。上一字の時も、/\とかくは、甚だ誤り也。或説に、二字以上の時、一月/\と書いては、一月月月に紛ふとて、一々月々とかけども、そは又、一一月月に紛れなん。何づれも難ずる時は疑あれども、推してよむに煩ひはなし。されども、俳諧は仮名書なれば、一々月々とは書きにくければ、一月/\の方に定むべし。是、真名と仮名との差別也。
 されば、「むら/\とと、ばち/\ととは、書方似ても訓異なれば、指合なき事は支考も知りて捌きながら、三四句もされとは何事ぞ。
 既に、獅子門下の人、この語に惑ふ事多年、勘破せよ、開巻の日。

※ 送り字
・ 「踊り字」「重ね字」「畳字」などと呼ばれる符号で、同じ漢字・仮名を重ねるときに用いるもの。固有の読みや意味を持つ文字と区別される。
・ ゝ・ゞ(一の字点)、〻(二の字点)、々(同の字点、ノマ点)、(くの字点)などがある。
・ くの字点は、横書きになじまないが、/\・%\などで代用される。当サイトでは、「前の文字に同じ」と了解し、「あか」では、「く」に見えてしまうので、「あかあか」と表記している。
・ この「送り字」の項は、内容上やむなく「くの字点」を用いた。二字分の点で「みな
」のようにしたが、やはり読みにくい。
・ 送り字はやはり縦書きになじむので、曲斎の説を縦にして再掲する。

 
   巻     も  異     ば  さ  何  と  説  む     書  〻  一  仝     ▲    
   の  既  さ  な  さ   ` れ  づ  て  に   ゜ さ  き  〻  月  の  蕉       
   日  に  れ  れ  れ  一  ど  れ   `  ` さ  れ   ` の  一  字  門  略    
    ゜  ` と  ば  ば  月  も  も  一  二  る  ど  上  草  月  に  に  字    
      獅  は   `  ` 〳   ` 難  々  字  に  も  二   ` を  て  は  を    
      子  何  指   ┐ 〵  俳  ず  月  以   ゜  ` 字  〳  一   `  ` 嫌    
      門  事  合  む  の  諧  る  々  上  上  二  に  〵  月  木  上  ふ    
      下  ぞ  な  ら  方  は  時  と  の  一  字  は  な  〳  木  下  は    
      の   ゜ き  〳  に  仮  は  か  時  字  以  〳  れ  〵  を  並  古    
      人     事  〵  定  名  疑  け   ` の  上  〵  ば   ` 木  べ  式    
       `    は  と  む  書  あ  ど  一  時  は  と   ` と  仝   ` 也    
      こ      ` と  べ  な  れ  も  月  も   ` 書  真  略   ` 越   ゜   
      の     支   ` し  れ  ど   ` 〳   ` 皆  き  名  す  草  も       
      語     考  ば   ゜ ば  も  そ  〵  〳  〳   ` 仮  る  草  嫌       
      に     も  ち  是   `  ` は  と  〵  〵  三  名  の  を  は       
      惑     知  〴   ` 一  推  又  書  と  に  字  と  み  草  ざ       
      ふ     り  〵  真  々  し   ` い  か  て  に  も   ゜ 々  る       
      事     て  と  名  月  て  一  て  く  済  は  に  仝   ` 也       
      多     捌  と  と  々  よ  一  は  は  ま   `  ` の  一   ゜      
      年     き  は  仮  と  む  月   `  ` す  〻  上  草  日  元       
       `    な   ` 名  は  に  月  一  甚  も  〳  一  書  一   `      
      勘     が  書  と  書  煩  に  月  だ   ` 〵  字  々  日  送       
      破     ら  方  の  き  ひ  紛  月  誤  埓  と  に   ` を  り       
      せ      ` 似  差  に  は  れ  月  り  明  か  は  其  一  字       
      よ     三  て  別  く  な  な  に  也  く  く   ` の  日  と       
       `    四  も  也  け  し  ん  紛   ゜ な  也  〻  草  〻  は       
      開     句  訓   ゜ れ   ゜  ゜ ふ  或  ら   ゜ と  〻  〻   `      
                                              ゜  ゜         
[萩枕]
一泊り

初ウ7  │さま
の貝ひろうたる布袋   翁
  8  │ 地獄画をかく様の哀れさ   路通
 9 〻の│きぬ
の尻目に鐘を恨むらん  木因

[続寒]
五人ぶち

名ウ1  │はら
と桐のは落つる手水鉢  翁
  2  │ 書付けてある釜の稽古日   野坡 ※集「鎌の」
 3 〻と│やう
とかき起されて髪梳り  翁  ※集「漸(ようよう)と」

[壬]
つぶ

名ウ3  │ふら
と煙管に付くる貝の殻  猿雖 ※集「きせる○付(ママ)」
  4  │ 幾つくさめのつゞく朝風   惟然
 5 〻と│さわ
と花の浪よる大手先   望翠 ※集「花・・・・大手に(ママ)」

◆[笈]

     │むら
と李ばかりに市立て   一髪
     │ 寝起の儘の天窓付也     杏雨
   〻と│はち
と竹さしくべてあたりゐる 杏晨

[雪白]

     │きら
と金灯篭に灯りたり   一由
     │ 誰かはしらず駒下駄の昔   倚菊
   〻と│安々と詞にのこる旅の花    一庸

◆[射]
山陰の

脇    ┌ はら
松に遊ぶ鷺の子    十丈
第三   │障子さす床の懸物風荒れて   牧童
初オ4 短└ おの
一つ枕受けとる    北枝

[このは]

     ┌ ちん
となる秋の下水    許六 
     │焼き止て庫裏も静まる座禅鐘
    短└ かたり
とさむき沓音

[あら]
麦を忘れ

名オ1  │冬の日のてか
としてかき曇  越人
  2  │ 玄猪にゆくと羽おり打着て  野水 ※集「豕子(いのこ)に」
  3  │ふら
と昨日の市の塩いなだ  荷兮
 4 〻と│ 狐着とや人の見ゆらん    越人 ※集「狐つきとや」
 5 上下│柏木の脚気の比のつく
と   野水

[山琴]

     │城下は三日法度のをり
に   有中
     │ 連歌の座敷物静かなり    其右
    下│水海に闇の蛍のちら
と    陶五

         ○

[ひさご]
畦道や

初オ6  ┌ 度々芋を貰はるゝなり    珍碩
初ウ1  │むしは皆つゞれ
と鳴くやらむ 正秀
 2 三続└ 片足
の木履尋ぬる     珍碩

[百歌仙]

     │そこ
にならぬ行灯の火が細い 南枝
   上並│ ほろ
あめのかゝる行水   柳泉
   下並│一畝の粟も嵐にゆら
と    不桑
     └ 八朔客の今にべん
     両支


飲食

□ 飲食かはり、越を嫌はず。(古へは二去)       ↑ トップへ

[其鑑]
精進は

名ウ2  ┌ 小鍋のかゆに猫の狼ぜき   山市
  3  │掃除して箒をはたく椽の端   右兮 ※集「掃きのけて」。縁のはな
  4  └ 息子の運ぶ茶を誉めてのむ  可及

[賀茂]
鴬の

名オ3  │飲喰の口にこそ世はあぢきなき 楚竹
  4  │ 流れ次第の舟のはらはら   鴎笑
  5  │門にまつ息子をたらす笹の飴  素後

[雪白]

名オ12  ┌ 口あいてゐる鉢の赤貝    魯九
名ウ1  │道成寺過ぐる間の南風     白椎
 2 酒肴└ 吐盞の酒をこぼす芝原    有節

△ 飲物、二去。(古へは三去)       ↑ トップへ

[白ダラ]
七十二候
鼻声に

二ウ10  ┌ 目薬さいて茶飲み友達    秋の坊
     │ 二
  13  │酒のよい所は嬉し月と花    野棠

[さみ]

     ┌ 咄してゐれど茶もわかぬ也  玉蘭
     │
     │酒と名のつけば酸でも飲たがる 玉蘭

[浪化]

     ┌ 湯はぬるけれど薄茶一ぷく  厚羽
     │
     │はえ釣りの酒はさめたる水の月 桃妖

△ 食物、二去。(古へは三去)(多省)       ↑ トップへ

[白ダラ]
水くさき

初ウ5  │けさ食うた儘に調市が柳ごり  支考 従吾 ※集「でつちが柳固」
     │ 二
  8  └ 飽かぬ物には豆麩なりけり  北枝

[東山万]
[東山墨]
百韻
散ればこそ

二オ2  ┌ 消残りたる冷飯の様     夏暇
     │ 二
  5  │有がたい殿の詞を膳の上    右範

[八夕]

三ウ13  │蒲鉾をやくは花見か芝居見か  麁吹
     │
名オ2  └ 飯の御恩の天下太平     友五

[さみ]

     │夕飯に何はせねども夕月夜   百阿
     │
     └ 否物くひて犬にかゞるゝ   一宇

[長良]
短歌行
鵜の羽ほす

名オ3  │昼飯に朝寝の手水さし合はせ  里紅
     │ 二
名オ6  └ 村はにぎはふ毛見の弁当   霜烏

[歌]
鹿の音の

初ウ6  ┌ 赤も黄な粉も餅嫌ひやら   水胡
     │ 二
初ウ3  │昼飯か夕飯かとて笑はるゝ   袋太

[むつ]

     ┌ 月見の席に飯はくひ勝ち   茲少
     │
     │手の垢に飴はきたなき蝶や鳥  茄毛

[山中]

     ┌ さし心得て酸物を出す    蘭少
     │
     │夕飯の約束もして花も見て   凉菟

[焦]

     │つみ交に藻魚かさこやかな頭  白桜
     │
     └ 生姜酢ばかり何やらの鉢   白桜

[難]
百韻
雲に鳥

三ウ14  ┌ 節は近江で仕廻ふ献立    蘇守 野棠
     │
名オ3  │お寺にはくはれてあはぬ百の斉 野角 侶鵠

△ 非飲食物、同体、越、嫌はず。       ↑ トップへ

 菜穀類、野菜、菓、狩漁の魚鳥、精進、豆ふ屋、菓子屋、酒屋、茶湯士、食傷、留飲の類。

[冬]
炭売の

初ウ10  ┌ 冬まつ納豆たゝくなるべし  野水
  11  │花の跡桜のかびを捨てにけり  翁  
※集「花に泣く桜の黴とすてにける」
名オ1 ・└ 僧物いはず欵冬をのむ    羽笠 ※やまぶきを

[歌]

     ┌ 飯くひに行て果てぬ船頭   嵐草
     │馬市の叶ふ新地の御取立    昇角
    ・└ むかしは米が百に八升    冠耶

[このは]

     ┌ 強ふるにこまる辛い入麺   覧陳
     │[山戔]岸に瓢這ひかゝる宵の月 孟遠
    ・└ 茄子をくひに鹿のこす也   壮奚

[難]
百韻
茸狩に

三オ4  ┌ 喰はさぬ意趣を組の讒言   抒柳
  5  │折々に妾の親は消えに来て   知角
  6 ・└ けふの精進は鯖江さう也   山隣

[きしん]

     │秋かつを本膳の部をはづされて 杏英
     │ 茶めかせたまふ上口かな   咫尺
    ・│朝腹の尋ね慥に蓮戻      安士

[宇陀]

    ・│客人に食傷したる玄関番    許六
     │ 荒剃刀かゝるこんにやく   毛紈
     │春も又さゆる朝の小豆かゆ   程己

△ 飲食、付句。(多省)       ↑ トップへ

[一]
百韻
須摩ぞ秋

二ウ9  │冷飯を鬼一口に喰ひてけり   似春
  10  │ 是生滅法生姜うめ漬     翁

[枯]
花鳥に

名オ9  │嬉しがる階子の下の濁り酒   臥高
  10  └ 砂鉢の蛸を双六の賭     そ紫 蘇葉 ※集「蛸は」

[草刈]

     │飲捨てし鉢の肴に猫の声    牧童
     └ よそは味噌する夕飯の空   浪化

[古今抄]

 飯、餅、茶、酒。此の類、其の名を其の儘に、百句に二つ也。

[星月夜]

 酒(さけ)、酒(さか)、酒(しゅ)、酒(ささ)、あはもり、諸白、みきなどゝかはり、折に一つづゝ。
 上戸、下戸、酔、醒、樽、盃等の噂、面をかへ、都合百韻に六つばかり。(以上約文)

▲ かくいへども、其角、支考捌き巻の、然らざるを見て、二書を勘破せよ。何故に、二士、等身を省みざるぞ。

△ 酒、同訓、面去。       ↑ トップへ

[蓬]
つくづくと

初ウ5  │松風の饗に酒を飲み尽し    閑水 ※もうけに
     ├─十四
名オ8  └ 戯れて君と酒買ひにゆく   翁

[蓬]
何とはなしに

初オ6  ┌ 酒のむ姨のいかにさびしき  桐紫 桐葉
     ├─十一
初ウ12  └ 羽おりに酒をかふる桜や   桐葉 ※集「かへる桜屋」

◆[しし]

     │嘘ならば今のむ酒も毒となれ  曽及
     ├─十六
     └ 濁り酒にてだます権現    山隣

△ 酒、音訓、飲・酢・樽・盃にかはり、五去。       ↑ トップへ

[拾]
色々の

初ウ10  ┌ まだ目のさめぬ酒のらうたき 東藤
     ├─三
名オ2  │ 酔うて又寝るこのはしのうへ 翁
     ├─十五
挙句   └ 茶に酒にまづ水のあたゝか  そ紫 桐葉

◇[花摘]
笑うなよ

初ウ2  ┌ 爪十分にしたす盃      其角 ※集「ひたす」
     │ 七
初ウ10  │ 名月日よし酒迎へ人     ト宅
     │ 四
名オ3  │酔顔を紛らかしたる作り髭   紫雫 柴雫

◇[句兄]
飛蛍

第三   │酒価すむ旦暮月もはや入て   彫棠 ※集「酒債(さかて)すむ」
     ├─十
初ウ8  │ 打身に酒を是薬也と     其角
     ├─十一
名オ8  │ 酔うて廬山の雪の曙     其角
     ├─九
挙句   └ あこぎあこぎと春の酒もり  彫棠

◇[類]
鳴沢や

初ウ4  ┌ 解けて流れて三階の酒    来示
     │ 四
初ウ8  │踊迄筑波に勝ちしお酌取    其裔

[やへ]

     ┌ 思交に祈るおゑみ酒     釣寂
   ㋬ │ 三
     └ 新酒否なら否にしておけ   示右

△ 飯、面去。       ↑ トップへ

◆[雪の光]

     │重箱に昼飯通ふ後道      保州
     ├─十四
     └ 飯は焚ずに上ハの空焚    芦舟

◆[長良]
長歌行
うれしさも

初ウ12  ┌ 昼飯過ぎの鑿磨でゐる    梨雪
     ├─十七
名オ14  └ 念町講の飯はもち寄り    蓮二

△ 飯、茶、其の器とかはり、五去。       ↑ トップへ

◆[難]
百韻
雲に鳥

名オ11  │飯次に火燧の猫も付いて出て  左林
     ├─五
名ウ3  │飯留に合うても鈍な物覚え   禹洗

◆[白ダラ]
七十二候
鼻声に

二ウ10  ┌ 目薬さして茶のみ友達    秋の坊 ※集「目薬さいて」
     ├─五
名オ2  └ 近い世帯の先茶わんでも   雨青

◆[三笑]

     │誰とても茶碗を見れば新酒にて 古賀
     ├─六
     └ 榎木が茶屋で駕の隙やら   播東

△ 茶、面去。       ↑ トップへ

◆[桃]

     │迎へには茶漬くはする気も付ず 雨揚
     ├─六
     └ 茶になぐさむる年寄のるす  徐来

◆[つるも]

     ┌ 立茶所望でばゝのわせたる  旦井
     ├─二十一
     └ 茶湯の好な人のやゝ寒    半袖

◆[桜山]

     ┌ 咄すあがりに茶を入れてにる 荻人
     ├──
     │ばゝ達の又寄合て茶の匂ひ   風絮
     │
     └ 娘がくれた重で茶をにる   梅滴

◆[三日]

     ┌ 彼岸の内の茶は手物なり   支考
     ├──
     └ 茶菓子もちよつと柴の爪折  除風

△ 餅、面去。       ↑ トップへ

◆[梅十]

     │此餅を喰てはあはぬけふの駕  桃川
     ├─十二
     │歯ぬけを知つて餅の焼米    泊楓

◇[類]

     │たべつけぬなんひん餅を忍ぶらん 朝叟
     ├─十二
     └ 餅の丸みを握り出すつや   嵐雪

△ 米、面去。       ↑ トップへ

[このは]

     │焼米をそつと一匙茶に佗びて  壮笑
     ├─六
     └ 小春天気に米だるゝ左右   列孚

[このは]

     ┌ 餅米たくはふ祭り来にけり  許六 
     │
     └ たんたと米はいづる川口

△ 菓子・塩・油・肴、折去。       ↑ トップへ

[桜山]

     │しめやかな雨に茶菓子の取合  蛍曙
   菓子├──
     └ 面々盆の菓子つゝむなり   和笑

[百歌仙]

初ウ2  │是ばかり酢も懸られぬ塩肴   李邦
   塩 ├──
     │盃に塩をつまみて淀の花    晩柳

[古拾]
[江戸十]
塩にしても

初ウ2  ┌ 油何々雲に流るゝ      春澄
   油 ├─
名オ7  │帳面の〆を油に揚られて    翁

[梅十]

    ウ│声のかれたるさかな売り也   呂杯
   肴 │
   三ウ│たしなみておく肴振廻ふ    七雨

△ 薬類、面去。       ↑ トップへ

[星月夜]
冴かへる

初オ4  ┌ 薬の名代売ひろめたり    松人
     ├─十
初ウ9  │灸かぶれ無二膏はればひつ付て 松和 ※集「ひりつきて」

[類]
[句兄]
ゆふだちや

初ウ9  │薬箱初に持たせて恥しき    介我
     ├──十四
名ウ2  └ 匙がふるへて薬味こぼさす  介我

△ 湯、飲・浴・泉かはり、面去。       ↑ トップへ

[古今抄]

 湯汁、此の類言ひかへ、折を去りて、四あるべし。

▲ 音訓言ひかへては、二去の自証あり。同訓、用かはりては、五去か面去にて、可ならむ。

◆[白ダラ]

     ┌ 褌忘るゝ湯上りの袖     支考
  湯音訓│
     │茶湯するけふの仏も草の陰   支考

 笑(わらい・しょう)、古(ふる・こ)、二去の例に同じ。

◆[きく十]

     ┌ 湯衣の色のそろふ踊子    乙甫
     │ 三
     └ 湯気もさめぬに豆ふ急用   昨嚢

◆[浪化]

     ┌ 湯の花あくる杜の神風    金嶺
     │ 六
     │湯上りに出て見る店の人通り  桃睡

◆[笠]

     ┌ 雇はれぬ日も湯に入りに来る 連支
     ├─九
     └ 奢のくせに成りし湯の山   童平

◆[たそ]

     │湯の山の出る日はぢゞの機嫌也 東羽
     ├─九
     │洗足の湯はちりちりと一薬罐  馬岐

[古今抄]

 豆麩をおかべと言ひかへても、一座一つ也。

▲ 豆麩は、何故に制重きや。言ひかへずとも、折去にて可ならん事は、菓子の例にてしるし。


□ 衣類、二去。(古は三去)(七部例省)㋬       ↑ トップへ

[句餞]

名オ7  │駕下りて野服かいどる秋の露  沾荷 露荷 ※集「馬を下りて」。のぶく:野袴
     │ 二
名オ10  └ 大口着たる庭の雪掃     翁  ※おおぐち、大袴のこと

[けふ]

名オ10  ┌ 干帷子のしめる三日月    猿雖 ※ほすかたびらの
     ├─二
名ウ1  │衣着て旅するこゝろ静かなり  翁

[雪丸]
御尋に

名ウ2  ┌ 垢れて寒き祢宜の白張    風流 ※集「よごれて」。しらはり
     │ 二
名オ5  │咲きかゝる花を左に袖敷て   木端

[壬]
霜に今

名オ10  ┌ 露にけさばや着る物の紋   百歳
     ├─二
名ウ1  │狩衣に下知のゑぼしを傾けし  梅額

[深川]
冴そむる

初ウ1  │中形の半着物も旅なれて    杉風 執筆
     │ 二
初ウ4  │地をするばかり駕の振袖    曽良

[しし]

     ┌ 羽おりを質に取つて戻さぬ  半睡
     │
     │粽ゆふ笹のつゆにも袖ぬれて  知角

[其鑑]

     │一季居も築地に綺羅を引出され 巴洲 ※いっきすわり:一年契約の奉公
     │
     └ 袷になりて見ても肌寒む   一宇

△ 非衣類物、越、嫌はず。       ↑ トップへ

 夜具、冠物、襷、帯、紐、足具、鎧、織物。

[一]
百韻
色付や

名オ8 ・┌ 朝霧たゝむ夜着の芦鶴    杉風 ※よぎのあしたづ
  9  │揚屋より月は雲井に帰らるゝ  翁
  10 ・└ 乙女の姿白繻子の帯     杉風

[つばめ]

名オ3 ・│手枕に褥の埃打ちはらひ    翁
  4  │ 美しかれとのぞく覆面    北枝
  5  │つき小袖薫売の古風也     翁  ※たきものうりの

[拾]
[幽]
ほとゝぎす

名オ3  │挟てははあるかと腰の汗拭   桐葉
  4  │ 〓 育也けり        翁
  5  │脱ぎかぬる一つ羽織のひとつ紋 閑水

[あら]
十八句
我もらじ

11   ・│けさよりも油揚する玉襷    越人
12    │ 行灯はりて帰る浪人     嵐雪
13    │きるものを砧にうてと一つ脱  嵐雪

[夕顔]
朝顔の

名オ8 ・┌ 鰻かくとて帯やたくれり   宰陀
  9  │田楽もやせて枯野の一つ家   我笑
  10  └ 莚うつ身の綾におどろく   利角

[賀茂]
蝙蝠も

名オ1 ・│ひがんには江戸紫の雲の帯   素後
  2  │ ばゞに詞を御門跡様     鴎笑
  3  │首綿に目病の涙おし拭ひ    正住 ※集「病眼の泪」

[其灯]
ほとゝぎす

名ウ3 ・│買ふ人が来れば細工の肌入れて 麦林
  4  │ 下におかれぬ物をあづかる  舎朶
  5  │花ざかり石の鳥居も小袖摺   茂秋

△ 衣(ころも)に衣(こ)、三去。       ↑ トップへ

[壬]
霜に今

初オ6  │腕押つよき露の衣手      槐市
     ├─三
初ウ4  │紙衣羽おりをすこし匂はせ   式之

[韻]

発句   │月雪にさびしがられし紙衣かな 許六
     │ 三
初オ5  │懐のふくれてつるゝ夏衣    汶村

△ 衣(ころも)・衣(きぬ)、五去。(古今同)       ↑ トップへ

[焦]
牡丹ども

第三   │薮入の天の羽衣稀れに着て   周東
     ├─五
初ウ3  │恋衣折々着ねば畳皺      含曲

[十七]
深川や

初ウ5  │頭巾有りて初旅衣杖はなし   含翠
     ├─九
二オ3  │但馬糸のより所げに恋衣    白主

         ○

[鵆]
笠寺や

初ウ5  │後朝のまた振袖にゑぼしきて  自笑 ※集「きぬぎぬ」。例なら「衣々」がよい
   ㋬ │ 三
初ウ9  │白きぬに萩としのぶを織り込て 如風

△ 袖・懐、五去。       ↑ トップへ

[一]
百韻
色付や

第三   │手水桶雲の広袖月もりて    杉風 ※てみずおけ
     ├─五
初ウ1  │茶巾さばき袖より伝ふ風過ぎて 杉風

[一]
百韻
色付や

三ウ7  │つらからん鬼のめかけの袖枕  杉風 ※袖枕:枕行灯
   ㋬ │ 三
三ウ11  │唐衣涙洗ひし袖の月      杉風

[藤の実]
寒き日の

初ウ5  │借よする祭の小袖二三百    野径
   ㋬ │
初ウ9  │饗応に髪を代なす袖の露    里東

[やへ]

     ┌もれて襷に小あゆくむ袖    松卜
     ├─四
     │広袖や蜻蛉つゑにうつ女    信徳

[類]
百韻
氷凝間を

初ウ4  ┌ 片しく袖のあとは艪の町   艶士
     │ 六
初ウ11  │新畳これも苧になる袖の雨   虎吟 虎笒

[類]
四十四
御溝葉(みかわば)で

名ウ1  │一撫に天の羽袖を五合升    専吟
     │ 六
挙句   └ 薹にたつ菜を袖にすらるゝ  其角

         ○

[芭]
短歌行
霜白し

名オ6  ┌ 講釈聞の僧の懐       黒露
     ├─三
名ウ2  └ 懐手してにくいしゝ舞    宗瑞

△ 袋・布、面去。       ↑ トップへ

[一]
百韻
此梅に

初ウ13  │大黒の袋は花に綻びて     信章
     ├─十一
二オ11  │よしやよし小糠袋の濁る世に  翁

[韻]

     ┌ 死拵への布をたしなむ    許六
     ├─十四
     │ほかほかと豆ふの布の湯気立て 許六

[拾]
〔種俵〕
箱根越す

第三   │五六丁布網ほせる家見えて   如行 ※しきあみ
     ├──二十一
名オ7  │布袋やぶれ次第の秋の風    如行 ※ぬのごろも


器財

□ 異器財、越、嫌はず。(多省)       ↑ トップへ

 異なる器財に、打越を難ずるは、古式也。蕉門には、さる小事をもて、変化をはからず。

[次韻]
五十韻
鷺の足

初ウ7  │武士の刄祭りを荒れにける   楊水 ※もののふのやいば
  8  │ 女はなくに早きとていむ   才丸
  9  │あさましく鏡のひづみたる恨み 翁  ※集「様あしく」

 刀・鏡は、男女の魂とする器なれども、許したり。

[冬]
つゝみかねて

名オ7 笠│雪の狂呉の国の笠珍らしく   荷兮 ※集「めずらしき」
  8  │ 衿に高雄が片袖をとく    翁
  9 樽│化人と樽を棺に飲みほさむ   重五 ※集「あだひとと」
  10  │ けしの一重に名をこぼす禅  杜国
  11 鐘│三日月の東はくらく鐘の声   翁

[ひさご]
亀の甲

名オ5薬罐│くらがりに薬罐の下を燃し付  昌房
 6   │ 伝馬をよばる我が廻り口   正秀
 7 槍箱│いきりたる槍一筋に挟箱    及肩
 8   │ 水汲みかふる鯉店の秋    野径 ※集「鯉棚」
 9 切子│さわさわと切子の紙手に風吹て 二嘯 ※集「切篭の」。しで

△ 同体器財、二去。       ↑ トップへ

 酒器、飯器、台所具、立具、鳴物、楽器、武器、表具、大工具、商具、雨具、臥具、女巧具、書画具、旅具。

[しし]

     ┌ 若い鉦鼓に軒の灯篭     巴兮
   鳴物│
     │晩鐘のあちらこちらに隠れ里  問次

[このは]

     │焼止めて庫裡も静まる座禅鐘  許六 
   鳴物│ 三
     │辻駕のしをれてはひるたゝき鉦

[やへ]

     │觱篥を月の雫に吹取つて    団水 ※ひちりき(篳篥)を
   楽器│ 三
     │小鼓に兄が謡をあしらひて   示右

[ひさご]
畦道や

初ウ6  ┌ 狐の恐るゆみ借りにやる   珍碩
   武器│ 二
初ウ9  │いらずとて大脇差も打ちくれて 正秀 ※集「いらぬとて」

[白ダラ]

     ┌ よしある家と見ゆる矢屏風  北枝
   武器│
     │川こさば近いに橋は弓と絃   支考

[深川]
口切に

初ウ6  ┌ 鎧かなぐる空坊の縁     洒堂
   武器│ 三
初ウ10  └ 露に朽ちけむ一腰の錆    支梁

[ぶり]

                      ㋬
     │思ひやる笠に千里の風寒し   午潮
   雨具│ 三
     │懸け廻るみのを野分の吹乱し  桃呂

[ひさご]
鉄砲の

                      ㋬
名オ11  │粘強き夜着に小さき蓙敷きて  泥士 泥土 
※集「糊剛き(のりこわき)」
   臥具├─三
名ウ3  │髪くせに枕のあとを寝直して  乙州

△ 笠・枕、五去。(古今同)       ↑ トップへ

[山琴]

     ┌ いかさまあれは只ならぬ笠  八菊
     │
     └ 谷の戸出づるうぐひすの笠  馬岐

[後旅]
墨の梅

名オ4  ┌ 切つて牡丹に日を覆ふ笠   介我
     │ 五
名オ10  └ 笠置は物のすごき水音    嵐雪 
※集「笠置当りのゝすこ紀水音」、「辺りの、の-」?「たりのの」?

[句兄]
飛蛍

初オ6  ┌ 後るゝ徒士はかづく袖笠   彫棠 ※かちは
     ├─六
初ウ7  │すゝ掃に笠も薪も片付けて   粛山

         ○

[つばめ]
馬かりて

名オ3  │手枕にしとねの埃打払ひ    翁
     │ 五
名オ9  │初発心草の枕に修行して    翁

[焦]
ふけしよを

初ウ8  ┌ 波ならなくに馬の背枕    檀泉
     ├─六
名オ3  │あの枕心を見んと流足     檀泉

[次韻]
百韻
春澄にとへ

三ウ8  │枕の清水香薷散くむ      楊水 ※こうじゅさん:暑気払漢方薬
     ├─七
名オ2  │荒布のしとね辛螺を枕と    楊水 ※あらめの。にしを

△ 杖・箱・台・箸、面去。       ↑ トップへ

[三日月]
長歌行
三日月の

初ウ2  ┌ 杖の撞木は釈教の外     一飛
    杖├─二十四
名オ11  │杖突の重石もきかぬ日雇とも  野秋

[花摘]
筆をさす

初ウ8  ┌ くまぐまさがす尼の針箱   彫棠
    箱│ 六
名オ3  │金箱につゝまれながら霜寒し  其角

[焦]
五十韻
粕買に

初ウ9  │小坊主をはさみ箱から傀儡師  序令
    箱├─十一
名オ7  │脇息に押へて在さへ枕箱    東潮

         ○

[焦]
牡丹ども

初ウ11  │身を一つ花にふらるゝ滝見台  含曲
    台├─五
名オ5  │燭台を配りぞこなふこゝは闇  銀杏

[次韻]
百韻
世に有て

三オ1  │飛雨台の跡は霞に空しきぞ   翁
    台├─十五
三ウ3  │恋崎の松か娘の花の台     翁

         ○

[一]
百韻
梅の風

名オ8  ┌ 願ひによって雪の竹箸    翁
    箸├─十一
名ウ6  └ 尖矢二筋俎箸の先      翁 
※とがりやにすじまなばしのさき

△ 荷・紙・簾、面去。       ↑ トップへ

[鳥ノ道]
秋ちかき

初ウ8  ┌ 舟荷の鯖の時分はづるゝ   翁
    荷├─十
名オ7  │したしたと京へ枇杷を荷ひ込  木節 ※集「荷(にない)つれ」

[砥]
葉がくれを

第三   │かち荷持手振の人と咄しして  翁
    荷├─十二
初ウ10  └ 露しとれども軽荷ふらつく  野明

[炭]
百韻
子ははだか

二オ5  │段々に西国武土の荷の湊    孤屋 ※集「荷のつどひ」
    荷├─十三
二ウ5  │浜までは宿の男の荷をかゝへ  野坡

         ○

[桃盗]

     │松に雪月うすうすとよしの紙  音吹
    紙├──
     └ 紙細工には霜の日ぞよき   楚由

[百歌仙]

     │四五束の紙を持つても紙屋にて 天垂
    紙├──
     └ 時分でもない紙子せんさく  淵竜

[壬]

初ウ1  │若殿の簾の中の大笑ひ     梅額
    簾├─十三
名オ2  └ み簾の屏風に画く唐獅子   梅額 ※集「絵がく獅」

[句餞]
時は秋

初ウ9  │月清く夕立あらふ御簾の煤   沾蓬
    簾├─十四
名オ12  │独り簾をあみくらす妻     沾荷

〔庵野分〕

     │山更に笑ふ様なる簾先     梅窓
    簾├─十四
     └ 簾にしのぶ影が見えすく   咄哉

△ 刀・弓類、面去。       ↑ トップへ

[皮篭摺]

     ┌ 既に厠へ落ちぬ脇ざし    嵐雪
     ├─八
     │大小の長いでおどす角力取   ロ遊

         ○

[深川]

     │巻わらに肩休まするはづし弓  北鯤
     │ 七
     │花の陰射よごす鏑防ぐらん   去来

△ 鐘・鉦・太鼓、面去。(古へは百韻三)       ↑ トップへ

[壬]

     │提灯をとぼせといひし鐘の声  夢牛
    鐘├─十六
     └ 明日の鐘鋳の月も晴たり   式之

[一橋]

     │今なるは初せの寺の鐘かとよ  国瑞
    鐘├─十八
     └ 槙の木立に鐘ひゞくなり   魯隠

         ○

[やへ]

     ┌ 七つの鉦はきかで明鐘    示右
    鐘├─八
     │世の外と閙しからぬたゝき鉦  只丸

[山カタ]

     ┌ 日も入舟の太鼓近よる    野航
 ㋬ 太鼓│ 五
     └ 風に太鼓の音は何所やら   野航

△ 車、面去。       ↑ トップへ

[藤]

     │下簾車を横に月さして     東李
     ├─十六
     └ 車に息をくるゝ日の岡    半蔭

[古今抄]

 車、百韻に二と云へり。其門人に、かゝる例あり。

△ 金・銀・銭、音訓、面去。同訓、折去。       ↑ トップへ

[草刈]

     │死ざまは銭六又に草枕     従吾
    銭├─十一
     │借せんの節季を何と駿河殿   従吾

[賀茂]
造酒までを

名オ3  │今吹の小判を橋に廓より    鴎笑 ※いまぶき、鋳造出来立て
    金├─十四
挙句   └ 千金とあるわれわれが春   執筆

[鶴]
百韻
日の春を

二オ11  │永禄は黄金乏しく松の風    仙化
    金├─十六
二ウ14  └ 酒もりいさむ金山が洞    朱絃 ※かなやまがほら

         ○

[三日]

     ┌ 先度の状にかねが届いた   除風
    金├──
     └ かねほしがるも人は尤も   除風

△ 金・銀・銭とかはり、五去。       ↑ トップへ

[はの]

     │家中に金の見ゆる杮時     柯木
     ├─
     └ 美男に銭がなくて嬉しき   蓮之

[梅さが]

     │懐へ金くれさうに手を入れて  天垂
     │ 八
     └ 銭なら百が苦を懸くる也   三惟

[このは]

     │小判にて銭も買はれず湯治旅  杜六
     │
     │銀をかす利勘のための寺参り  石介

△ 草鞋・縄・俵・網、折去。       ↑ トップへ

[桃白]

     │若皇子に始めて草鞋奉り    濁子
   草鞋├─
     └ 老いの草鞋のいつ脱げたやら 翁

         ○

[ひさご]

初オ4  ┌ 小歌そろふる碓の縄     探志 ※集「からうすの」
    縄├───二十九
名ウ4  └ なはをあつむる寺の上茨   及肩

[類]
四十四
氷凝間を

名オ3  │ほつたては蜘手掻縄待ちほうけ 格枝
    縄│ 九
名オ13  │うつかりを多勢が中へ飾り縄  格枝 ※集「かざり索(なわ)」

         ○

[別座]
紫陽草や

脇    ┌ よき雨間につくる茶俵    子珊 ※あまあいに
    俵├──十七
名オ2  └ 濡れたる俵をこかす分取   八桑 ※集「分ケ取(わけどり)」

[ひな]
芹焼や

初オ5  │薄月夜干か俵のなまぐさき   濁子 ※集「干鰯(ほしか)」
     ├───二十八
名ウ4  └ 俵のちりをたゝくきる物   翁  ※着るもの

         ○

[梅十]

     │網の魚雫ながらにお前まで   蓮二
    網├──
     │あみの儘西瓜を井戸へ冷し置  呂杯

△ 樽・蓋・板、折去。       ↑ トップへ

[山カタ]

     ┌ 酒とは見えぬ麦まきの樽   白狂
    樽├───
     │酒のない樽ならねせて置はせで 野航

[雪白]
芦に鷺

第三   │椀のふた階子の坂にかたがりて 知角
    蓋├───二十七
名ウ1  │一日の隙は地獄の釜のふた   小春

[韻]

脇    ┌ 宵の豆ふの氷る俎板     朱紬
    板├──二十
名オ5  │瓜茄子戸板の上の魂祭     朱紬


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