俳諧の作法 其角相伝本「昼の錦」と諸本の関連 作成中

其角相伝本「昼の錦」と諸本の関連 索引
初版本其角門相伝本と西村書林初版本の一致 1
其角門相伝本と西村書林初版本の一致 2
校正本其角門相伝本と太田庄右衛門校正本の一致
宋屋本其角本と宋屋本(双林寺頒布本)との一致
上記三本其角本と諸本の不一致 - 諸本の修正 -
其角本と諸本の不一致 - 其角本の修正 -


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はじめに

このページでは、
 1 書肆太田庄右衛門が校正した部分の前後。(は校正前の表現、は校正後の表現で、修正箇所に下線を付す)
 2 ③校正本⑤双林寺本を照合した際の、異なる部分。
について、①其角本との異同を見る。
 また、①其角本の内容についても、検討する。
 なお、④獅子門本は、③校正本の校正原本に近似、修正を示す下付き上付きの小文字は、⑤双林寺本に近似するので、参考として載せる。

 以下、諸本の説明は、
  1書名、2識語、3底本、4由来、5注釈
 の順。
①其角本<其角伝受、其角門相伝本> →「翻刻・校訂 昼の錦」を見る。
1 外題「昼の錦」、内題なし、目録に「二十五ヶ條」とある。
2 奥書に、元禄2(1689)年閏1月2日芭蕉が其角に伝授、元禄17(1704)年2月13日其角が門下に相伝したものとある。
3 底本は、「米沢善本完全デジタルライブラリー」所載、市立米沢図書館蔵。
4 〔芭蕉〕→〔其角〕→〔門人某〕→〔某伝?写?
5 元禄2年伝授であるが、元禄6(1693)年末の証句を載せる。これは、「元禄七年戌の冬、晋子嵯峨の落柿舎にて枯尾花を撰ず。折から去来に相議して、新式の闕漏を補へり。(星月夜、原松編)」を裏付けるものである。内容は整然としており、他の「昼の錦/二十五箇条」で不明な部分は、すべて解読できる。また、誤写はほとんどない。なお、第25条は去来伝受本と異なる。
②初版本<養魚蔵本、西村書林板行本> → 「校訂 二十五箇条」(下線部以外、初版本と同じ)を見る。
1 外題「ひるのにしき」欠落、内題「昼錦抄」とある。
2 刊記に、元禄元(1688)年6月芭蕉が去来に伝授。西村養魚蔵、書肆西村又右衛門とあり、享保21(1736)年1月板行とある。
3 底本、燕子(弘前藩士、涼袋兄))記名・印あり、八戸市立図書館蔵。
4 〔芭蕉〕→〔去来〕→ ? →〔養魚
5 板行後まもなく、享保21年9月までに、貼外題は「二十五条」、内題は「二十五箇条」に改められている。記述の多くが其角本と一致する。第25条が、去来伝受本のものであるから、「支考を経由しない去来伝受本」を基としたことになる。ただ、誤写が多く、意味不明な箇所が多い。
③校正本<上記を太田書林校正、額田書林板行> → 「校訂 二十五箇条」を見る。
1 外題「二十五条」欠落、内題「二十五箇条」とある。
2 刊記に、元禄7(1694)年6月芭蕉が去来に伝授、西村養魚蔵、書肆太田庄右衛門。額田正三郎板行目録により、宝暦9(1789)年以降の板行と分かる。
3 底本は、「雲英文庫」旧蔵、早稲田大学図書館蔵。
4 〔芭蕉〕→〔去来〕→〔支考〕→〔門下某伝?写?※ 校正原本
5 の内題「二十五箇条」とある板を、入木(埋木)修正した本である。入木部分は下線で示すが、との比較により、半数は適切で半数は適切でなかったことが明らかになる。不適切なのは、のような支考が書き替えたものを校正原本にしたためと思われる。
④獅子門本<支考の自門用伝書>
1 外題、内題なし。「続五論」の次に「俳諧二十五ヶ條」とある。
2 奥書に、元禄7(1694)年6月芭蕉が去来に伝授したものとある。「続五論」を含め、「享保三東羽丈伝之」「天保十江鶴写」、末尾に「千秌庵慎写」とある。塩谷千秋庵瑞夢仙は、名新吉、号鶴汀。再和派17世。天保4(1833)年生大正8(1919)年87歳没、
3 底本、「続五論・二十五箇条」、岐阜大学附属図書館蔵。
4 〔芭蕉〕→〔去来〕→〔支考〕→〔東羽〕→〔江鶴〕→〔千秋庵
5 「続五論」とともに、支考門の伝書としている。書き換えが甚だしく意味不明箇所が多いため、本書は見せ消しと挿入で修正している。
 この修正に用いた底本は、⑤双林寺本のような、書き換えの少ない初期の支考写本である。
⑤双林寺本<支考筆写本の写し> → 「昼の錦・引続錦紙(口伝)」を見る。
1 外題「昼の錦」、内題に「蕉門極秘昼の錦/俳諧廿五ヶ條掟」とあり、この後に「蕉門極秘茶話傳など、多くの伝を収める。その内「引続錦紙」は、「二十五箇条」の口伝集である。
2 奥書に、元禄7(1694)年6月伝授、宝永7(1710)年3月支考が写したものとある。
3 底本は、巻末の識語に、文政11年3月末、夜毎庵左月が伝写とある。江刺家左月、名は福治・左守・金七。盛岡藩花輪通代官。安政4(1857)年没。盛岡市中央公民館蔵。
4 〔芭蕉〕→〔去来〕→〔支考〕→〔冨鈴〕→〔礒音〕→?→〔左月
5 支考が手に入れて間もない宝永7年3月、東山双林寺で芭蕉十七回忌を行った際、有償で参加者に筆写させた。その際のひとつがこの宋屋本である。より遙かに意味を取りやすい。ただし、誤写がかなりある。筆写を急かされたか、推敲ができなかったかであろう。
 なお、支考の手を経てはいるが、入手後間もないころに芭蕉の秘伝として公開したものであるから、書き替えは少ないだろうと思われる。
以下に挙げて、比較検討する「昼の錦/二十五箇条」の表現は、
 1 書肆太田庄右衛門が校正した部分の前後。(は校正前の表現、は校正後の表現で、修正箇所に下線を付す)
 2 ③校正本⑤双林寺本を照合した際の、異なる部分。
で、折々の必要に応じて抜き出したもので、①其角本④獅子門本の関連部分を加えたものである。
 従って、相互の相違箇所を網羅したものではない。

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Ⅰ 其角門相伝本と西村初版本の一致 1

・ ①其角本②初版本を照合し、ほぼ一致する内容を抽出した。
・ ここでは、③校正本により修正されなかった部分(意味の変わらない表記の修正を含む)を順に書き出した。
・ 赤字は、相違箇所で、誤りと思われる部分を示す。
・ ④獅子門本の見せ消しは、文字毎に「ヽ」を重ねているが、ここでは取り消し線橙色字で示す。下付字上付字での書き入れは修正で、⑤双林寺本のような双林寺での写本を基にしている。挿入箇所を示すもそのまま転記した。
・ の誤写と思われるところは桃色字で示す。
・ 条目欄の1~25の数字は、の記述順に従ったものである。

①其角本
其角門相伝本
「昼の錦」
②初版本
西村養魚蔵本
「昼錦抄」
③校正本
「二十五箇条」
④獅子門本
支考門「二十五ヶ条」
⑤双林寺本
宋屋本「昼の錦」
1俳道何の為にする事ぞや何のためにする事ぞや何の為にする_何のためにするの言葉ぞや
4変化変化を見ざる故也変化を見ざる故なり変化を見ざる故なり変化を見ざるゆへなり
5起定歌には流の字の心なるべし歌には流の字の心なるべし歌には流字の心成べし歌にはの字の心なるべし
7脇脇はしつかりと韻字にて留るといふ事は脇はしつかりと韻字にて留といふ_脇はしかもつかりと韻字にて留ると_しつかりと韻字にて留るといふ_
10月 表か裏かに月一ツありてくるしかるまじきにや表か裏に月一ツ有てくるしかるまじきにやに月一ツあつても苦しかるまじきことなりにや表か裏かに月ひとつありてもくるしかるまじきにや
一座のあひしらひあるべし一座のあひしらひあるべし一座のあひしらひ有べし一座のあしらひ有べし
いづくにても子細なしいづくにても子細なし何所にありても子細有まじいづくにても子細あるまじき事なり
さして奇怪をこのむべからずさして奇怪をこのむべからずさして奇怪の事も結ぶべからず好まざれさして奇怪を好まず
13二季殊に十月の頃をかしことに十月のころをかしことに十月のをかし十月の頃をかしことに十月の比をかし
17趣向或は作にも或は不作にもあるひは作にも或_不作にも或は作にも或不作にも
或はかたく或やはらかにもあるひはかたくあるひは和かに_或は皆々も或は和かく或はかたく或は和かに_
尤打越の好悪もはやく知る故に最うちこしの好悪速くしる故に打越の好悪早く知る尤打越の好悪をも__知るゆへに
それは百韻にも三所四所はあるべしそれは百にも三所四所はあるべしは百韻に三所か四所べし去は百韻にも三所四所は有べし
20指合少宛は新古の事ありすこしづつ新古の事あり少しづつ_新古の事あり少しづつ新古のさかひあり
21辛崎正月斗は誠に三日月にてあらんと正月斗は誠_三日月にてあらんと正月ばかりは誠に三ヶ月にてあらん正月斗_誠の三ヶ月にてあらんと
23宵闇北よりの風そよぎたつ北よりのかぜ戦たつ北よりの風そよぎたつ北よりのかぜそよぎたつ
・ ③校正本により修正されなかった②初版本の部分、40の内16が、とほぼ一致した。
・ 「元禄七年戌の冬、晋子嵯峨の落柿舎にて枯尾花を撰ず。折から去来に相議して、新式の欠漏を補へり」という「星月夜(原松編)」の詞を信じれば、「其角本」と「双林寺本」の内容は一致していただろうと推量できる。ただ、⑤双林寺本は、支考の手を経たものである上に、慌ただしく写したものと思わざるを得ないほど粗相が多い。この粗相は、と同じ時期に写された別の写本を基に推敲、小文字で修正を加えた④獅子門本で、ある程度修正できる。
 人は天地より働くものなれど → 人は天地より働あれども → 人は天地より働きあれども
・ ②初版本の内容が、かなり①其角本と共通することから、養魚蔵本は、支考の写しではない本から写したものと推測できる。第25条が「仮名遣い」であるから、①其角本を写したものではない。「支考が写したものではない去来伝受のもの」とだけは言えそうである。


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Ⅱ 其角門相伝本と西村初版本の一致 2

・ ①其角本と、②初版本の「③校正本により修正された部分の元の内容」とを照合し、ほぼ一致する内容を抽出した。
・ 意味を変えない程度の小異は無視した。

①其角本
其角門相伝本
「昼の錦」
②初版本
西村養魚蔵本
「昼錦抄」
③校正本
「二十五箇条」
④獅子門本
支考門「二十五ヶ条」
⑤双林寺本
宋屋本「昼の錦」
2二字八雲御抄にも八雲御抄にも八雲御抄にも八雲にも八雲御抄にも
 「尤も」は、支考の書き足しである。
3虚実傾くををしむはかたぶくを惜むはかたぶくを惜む傾くをおしむ傾くを惜む
 「も」は、支考の不用意な書き替えである。
我家の伝授の人と我家の伝受の人と我家の_受__我家の伝授__我家の伝授__
③校正本は、板木の「傳」が摩滅している。 「の人」を省略すると、「人を伝授と言う」ことになる。支考の文は呼応しないことが多い。
4変化本より黒白一合もとより黒白一合道理はもとより黒白一合道理は元より黒白一合道理はもとより黒白一合
 「道理は」は、支考の蛇足である。
眼前のよき句眼前のよき句目前のよき句前の能句眼前のよき句
よきもよからずあしきもあしからず時によろしきを変化とは知るべし能もよからずあしきもあしからず時によろしきを変化と_しるべし能もよからずあしきもあしからぬ所に変化は虚実の自在よりしるべし能もよからずもあしきもあしからぬ所に変化は虚實の自在よりとず時によろしきを変化とは知るべしよきもよからずあしきもあしからず時に宜しきを変化と_知るべし
 により、支考が「変化は虚実の自在よりと知るべし」と書き替えたことが判明する。また、板行本の修正は、支考門伝書を拠としたことも分かる。
5起定一物起る時は対して又生ず一物発る時対して又生ず一物発る時対して又生ず一物?ずるおこる対して又生ず一物起る時に相対よく生ず
 「相」は、支考の不用意な書き足しである。「Aが起こり、対してBが生ずる」ので、「生ずる前にBが相対する」ことは、できない。「脇が発句に対する」のであって「発句が脇に対する」ことはない。
8第三蛼のまださだまらぬ鳴所かうろぎのまだ定らぬ鳴所かうろぎまだ定らぬ鳴所ろぎまた定らぬ鳴所まだ定らぬ啼所
 「も」は、支考の不用意な書き替えである。
9四句第三迄骨折たる故なり第三まで骨折たる故なり第三まで骨折たる故としるべし第三迄に骨を折たる故なるべし第三まで骨折たる仍なり
10月四花八月とも定りたるなり四花八月とも定りたるなり四花八月とも定まるなり四花八月とも定_るなり四花八月とも定たるなり
二花二月ともすべし二花二月ともすべし二花二月共有度事也二花二月ともありたきなり二花二月とも有義也
 「歌仙のときは二花三月だが二花二月ともしてよい。どんなときかと言うと」と、月を一つ略す限定的な例を挙げ、「一座のあいしらいあるべし」と条件を添える。
 それを支考は「ありたき」と書き替える。「歌仙は二花二月ともありたい」では、意味が変わる。後に二花二月の式を立てるので、我田引水の書き換えと言えよう。
秋の植物もしがたし秋のうへものもしがたしうへものもしがたしの植物もしがたしの植物も仕がたし
 「季」は蛇足である。
11花或はさくら鯛の類など前の花にあらそはざるものは付べしあるひは桜鯛の類など前の花あらそはぬものはつくべし或は桜鯛の類など前の花にあらざる桜ならばあきらかにしつて付べきなり或は桜鯛の類など前の花にあらざる桜ならば明に知て付べき也或はさくら鯛など前の花にあらざる桜ならば明らかに知りて付べきなり
 「前の」は「花に」に掛かる。「前の-花に」は「争はざる-もの」に掛かり、意味が分かる。
一方、で、「前の-花に」が「あらざる-桜」に掛かるとすると意味不明になる。「前の花」の「前の」は、「前句の」ということである。前句は花であって、「花にあらざる桜」ではない。桜鯛を「花にあらざる桜」と説明したつもりであろうか。
12当季花に鴬、月に露の類に花鴬月露の類に華鴬月露の類に花鴬月露の類に
 上は、②初版本③校正本、及び③「校正本」⑤「双林寺本」とが一致しているので、ここでの比較に載せなかったものである。次に関係するので、載せる。
一句のふりを付べき也一句のふりを付べし一句の風情を付べし一句のを付一句の風情を付べし
 ①其角本は、「当季より案じて、花に鴬、月に露の類に、一句のふりを付くべきなり」と言う。「春ならば、花に鴬と案じて、句の体を整えよ」ということである。
 他は、「花・鴬・月・露の類に、一句の風情を付くべし」である。「春ならば、桜とか鴬を案じて、風情を付けよ」と言う。「一句の」とあるが、「一句に」ではないか。あるいは、「一句○」はなくても「花鴬の類に風情を付くべし」で分かる。ただし、この場合「花鴬の類」の「類」が、問題になる。
13二季月の座にて異名の月月の座にて異名の月七句め他の季にて異名の月七句めに他の季にて異名の月七句めに他の季にて異名の月
青葉は雑也若葉として夏季也青葉雑也若葉として夏_なり青葉夏季にあらず雑也若葉とすべし青葉は夏季にあらず葉とすべしして夏季なり青葉は夏季にあらず若葉として夏季なり
一座の働にもよるべし一座の働にもよるべし一座の扱ひによるべし一座の働きに_よるべし一座の働きに_よるべし
14発季夏と見ゆる句もあるべし夏と見ゆる句あるべし夏と見ゆる時は其せんぎに及まじと見ゆるときは其詮義にはなし及まじ夏と見ゆる時は其詮議には及まじ
16付句一座成就せず一座成就せず一座終に成就せず一座終に成就せず一座成就せず
其座に望て無分別なるべし其座に望て無分別なるべし其座に望て無分別なるべし其座に臨のぞみは只無分別成べし其座にのぞみては唯無分別なるべし
17趣向その句捨る事かたし其句捨る事かたし其句を崩す事かたし其句を崩す事成りかたし其句を崩す事なりかたし
 「崩す事」は支考の書き替えである。「崩す」では、その句にこだわることになり、「趣向を変ゆる」につながらない。
儒書仏経とても儒書仏経とても儒書仏経源氏い勢迚も儒書経にも源氏伊勢物語とても儒書仏経とても源氏伊勢物語とても
 ③校正本は、「儒書仏教とても」を入木修正。狭いので「伊勢物語とて」を「い勢迚」と圧縮している。これは、のような支考門相伝書を校正原本とした結果である。を見ると、原文「儒書仏教とても」の後に「源氏伊勢物語とても」と書き足してある。
 → にないことから、支考の所業と判定。修正せず。
天地豈人の為に生ずや天地豈人の為に生ず天地豈人の為に生ぜずや天地豈人の為に生ぜず天地あに人の為に生ぜず
 は支考の書き替えである。上段、「崩す」では、その句にこだわることになる。下段は意味が逆になっている。
18恋句いたるべし先は陰陽の道理到るべし先は陰陽の道理到るといへ共先は陰陽の道理到ると云は先二句有て陰陽の道理いたる先は二句有て陰陽の道理
19切字我家には詮議なし我家には詮議なし我家に曽て詮義なし我家には曽て詮義なし我家には曽て詮義なし
今の証句はいかゞいまの証句はいかがいまの証句は心得がたきか今の世の証句は心得がたきにや今の世の証句心得がたきなり
覧とはねたるは三字同意らむとはねたるは三字同意らむとはねても三字同意らんとはねてもたるは三字同意らんとはねたるは三字同意
鷹の目のいまや暮ぬと鳴鶉 鷹の目いまや暮ぬと鶉鳴 鷹の目いまや暮ぬと鳴うづら鷹の目今や暮ぬと?く啼く鷹の目今や暮ぬと鳴鶉
 「鷹の目も」を完成形とすることが多いが、ここでは、との一致を見る。
 鷹の目の今やくれぬと啼鶉   (流川集)
 鷹の目も今や暮ぬとなくうづら (宇陀法師)
 鷹の目もいまや暮ぬと啼鶉   (小文庫)
20指合されど初心には上座の了簡にてされど初心には上座の了簡にてされど座の了簡を以て初心にはされ共一座の了簡にて初心の人はにはされ共一座の了簡にて初心には
21辛崎よの常の謡浄瑠りにもしるべし尋常のうたひ浄瑠璃にもしるべし尋常のうたひ浄瑠璃にもしるべき事也尋常の謡浄瑠理(ママ)にもしるべき事なりよのつねの謡浄瑠璃にもしるべき事なり
春の気しきのみ曲もなくまた節もなきもの也春の気色のみ曲もなく又節もなきものなり春の気色のみにして曲もなく節もなきものなり春の気色にしてなく_節もな物なり春の気しきのみ曲もなく_節もなき_なり
世間にとまらぬといふ沙汰あれども世間に留らぬと沙汰あれ共世間に留る留らぬ沙汰あれ共世間に留るとまらぬと沙汰あれ世間にとまらぬといふ沙汰あれども
花より松がおもしろいと決定すれば片題の褒貶のがれがたし花より松が面白と決定れば片題の褒貶のがれがたし花より松が面白いと決定するは片題の褒貶のがれがたし花より松朧にて面白と決定す題の褒貶遁がたし花より松が面白いと決定す題の褒貶のがれがた
 「片題落題」の「片題」である。の「偏題」は、双林寺本における支考の書き誤りである。
たゞおもしろからんと只面白からむと但シ面白からむと但し面白からんと面白からんと
不決定の中決定也不決定の中決定なり不決定の中決定なり決定の中決定也不決定の中__なり
哉留の発句の第三には子細ある事も哉留の発句の第三には子細ある事哉留の発句の第三に留の子細ある事哉留の発句の第三ににての留り子細有哉止の__第三に子細有にて
22鳶其時もしれる人稀なれば其時もしれる人まれなれば其時もしれる人まれなるが其時もしれる人稀なれば其時もしれる人稀なれば
今更付合の格式ともいふべし今更付合のかく式ともいふべし今更付合のかく式とも知るべし今更付合の格式と_云べし今さら付合の格式と_いふべし
・ やはり、①其角本②初版本の一致度は高い。
・ ③校正本による修正は、すべてに合致しない。

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Ⅲ 其角門相伝本と太田校正本の一致

・ とは言え、③校正本も、①其角本とかなり一致する。

①其角本
其角門相伝本
「昼の錦」
②初版本
「昼錦抄」
③校正本
太田庄右衛門校
「二十五箇条」
④獅子門本
支考門「二十五ヶ条」
⑤双林寺本
宋屋本「昼の錦」
1俳道されども俳諧の姿され俳かいの姿され共俳かいの姿され共俳諧の姿かたち_俳かいのかたち
3虚実人を恨る所あり人をうらむ_所有人をうらむる所有人を恨る所有人をうらむる処なり
といふものは上手に嘘をといふ物は上手にといふ物は上手にと云物は上手に嘘を_は上手に嘘を
4変化百韻は百句に百句は百句に百韻は百句に百句は百句に百韻は百句に
事也その変化を事なり_変化を也其変化事也その変化を事也その変化を
5起定合とは万物一合也万物一合とは万物一合なり合とは万物一合なり合とは万物一合なり合とは万物一合なり
7脇色々の名もむつかしや春の草色々の名もまぎらはし春の草色々の名もむつかしや春の草いろいろの名もむつかしや春の草色々の名もむつかしや春の草
うたれて蝶の夢はさめぬるみだれて蝶の目をさましぬるうたれて蝶の夢はさめぬるうたれて蝶の夢はさめぬるうたれて蝶の夢はさめぬる
8第三にの字ての字にも限ずとしるべしにの字ての字にもかぎるべからずとしるべしにの字ての字にもかぎらずとしるべしにの字ての字にもかぎらずとしるべしにの字ての字にも限らずと知べし
9四句中品以下の為にして中品以上の中品以上のためにして中品以下中品以下のためにして中品以上の中品以下の人の為にして中品已上の__中品以上の
11花其物その物の正花ともにものものの正花そのものそのものの正花其物其物のの正花
16付句付句は初念の付句は初会付句は初念付句は初念の付句は初念の
17趣向百千の数ありとも前後はちかし百千の数有ても前後_近し百千の数有前後は近しの数だにありても前後は近し百千の数ありて_前後を近く
暖簾 村雨暖簾 時雨暖簾 村雨暖簾 村雨暖簾 村雨
変化の姿も明に見ゆる故に変化のすがたも明らかに見えざる故に変化のすがたも明らかに見ゆる故に変化の姿を明らかに見ゆるなれ故に変化のすがたも明に見ゆる故に
18恋句只当句の心に恋当季の心に恋当句の心に恋只当句の意に恋只当句の意に恋
19切字大回 し玄妙切など云る切字の事は大廻し玄妙切などいへる切字の事は大廻し玄妙切などいへる切字の事は玄妙切大まわしいへる切字の事は玄妙切大廻し抔いへる切_の事は
我は家を人にかはせて年わすれ我は家を人に買はせて忘れ我は家を人に買はせて忘れ我は家を人に買せて年忘我は家を人に買せて年忘
21辛崎発句と第三と平句との差別発句と平句と第三との差別発句と第三と平句との差別発句と第三と平句との差別発句と第三と平句との差別
辛崎の松の朧にてからさきの松_にてとからさきの松の朧にて唐崎の松朧にて辛崎の松の朧にて
22鳶かならずすまじき作意なりかならずすまじきなりかならずすまじき作意なり必ずすまじき作意なりかならずせまじき作意なり
23宵闇八月は旅面白き小幅綿八月は旅おもしろく小幅帯八月は旅おもしろき小幅綿八月はおもしろき小幅(ママ)綿八月は旅おもしろき小幅綿
24名所あさよさを誰松島ぞ片心朝よさを誰松島片ごゝろ朝よさを誰松島片ごゝろ夜をたゞ松しまぞ片心朝よさを誰松島ぞ片心
此内須磨あかしの句は此句須磨明石の句_此中須磨明石の句は須磨明石の句は此うち須磨明石の句_
其さかひはひわたるなどゝいへる辞より_はいわたるなどといへること葉より其境はいわたるなどといへること葉よりその境はい渡るほどといへる語なり詞よりそのさかい這ひわたるほどといへる詞より
思ひよせたれば思ひ寄られたれば思ひ寄せたれば思ひよせたればおもひみせたれば
識語不可伝写他人不可伝他人不可伝他人不可伝写他人芭蕉翁奥書有略之
・ 内容を見ると、②初版本の単純な誤りを補う。
・ の誤りも少ないことは、支考が書き替えなかった部分ということになる。。

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Ⅳ 其角本と宋屋本との一致

・ ⑤双林寺本①其角本とが、ほぼ一致する内容を抽出した。
・ ②初版本の誤りを赤字で示す。単なる書き損じと思われる。

①其角本
其角門相伝本
「昼の錦」
②初版本
「昼錦抄」
③校正本
「二十五箇条」
④獅子門本
支考門「二十五ヶ条」
⑤双林寺本
支考筆写の写
宋屋本「昼の錦」
1俳道仏道には達磨_に_達摩仏道に_達摩仏道に達磨仏道に_達摩
常に反ひて常に返て道に反て道に反 ソムイ常に反て
道に合ふ道に叶ふ道に叶ふ道に合カナ道にかなふ
2二字誹は非の音也とも誹はの音なり_誹はの音之共誹は非の音之とも誹は非の音なりとも
3虚実嘘にをしむはにをしむは虚にをしむはうそにをしむは
 「実は、~人を恨る所あり。たとへば、~月の傾くを惜しむは、連哥の虚也。嘘に惜しむは俳諧の実也」とある。対句表現と見なせば、「虚に惜しむは」がよい。ちなみに、許六「俳諧雅楽抄」には「たとへば、~月の傾くを惜む。実に惜むは連歌の虚也、虚に惜むは俳諧の実也」とある。
 しかし、次に「そもそも、詩歌連俳といふものは、上手に嘘をつく事也」と、「嘘」を特記説明することから、「嘘に惜しむは」とあったはずである。
 ①其角本は「嘘」、⑤宋屋本は仮名で「うそ」とし、は虚の左に口を書き入れ「嘘」の字に作っていることから、双林寺本にも「嘘」とあったと思われる。
4変化変化する事を得されは変化する事を得さるは変化する事をしらされは変化する事を得されは
5起定無念相の中に念相を起すを発句といふ也無念相のうちに念相を_発句といふなり無念無想の中に念相をを発句といふなり無念相の中に念相を起こすをいふ是を発句と云なり
9四句いふ事をしらざれば自己の俳諧にくらきと云事をしらざれば其自の俳かいくらき人と云事をしらざれば自己の俳かいくらき人と云事をしらざれば自己の俳諧闇き人となをしらざれば自己の俳諧にくらき人と
10月 月花は風雅の的也_は風雅の的なり月花は風雅の的なり月花は風雅の的なり
裏の八句目に月秋をする事裏の八句めに月花をする裏の八句目に月秋をる事裏の八句めに月秋をする事
其時のほどよきやうに付て置べし其時の_やうに付て置べし其時_程よきやうに付て置べし其時の程能様に付て置べし其時の程よきやうに付て置べし
12当季當季を捨て趣向より当季を経て趣向より当季を捨て趣向より当季を捨て趣向より
13二季いにしへは二季に右は二季にむかし三古は二季に~古へは二季に
15発像発句にても付句とても目をふさぎて発句とても平句とても目を閉て発句とても付句とても目を閉て発句迚も付句とても目をふさぎて発句とても付句とても目をふさぎて
16付句心を落し付ぬがよき也心を落しつけ__よきなり心を落しつけるがよき也心をとして付が能き也心を落しつけぬがよき也
17趣向付合は先趣向を付句は_趣向を俳諧の趣向を俳諧の付合は先趣向を
黒白青黄の姿を作るに黒白青黄のすがた作るに堅く黒白青黄のすがた作るに黒白青黄姿を作るに黒白青黄のすがたを作るに
18恋句野郎傾城の文字名目にて恋とはいはず野老傾城の文字免目にて恋といはず野郎傾城の文字名目にて恋と_いはず時節次郎傾城の文字名目にて恋とは云ず野郎傾城の文字名目にて恋とはいはず
19切字其外三段切三字切などもその内三段切二字切なども其外三段切三字切抔もその外三段切三字切なども
目には青葉目に_若葉目に_青葉目には青葉目には青葉
やむ時は何々としてさてねやの朧月夜はと__閏の朧月夜はと止む時は何々として扨閏の朧月夜とははとやむ時は何々としてさて閏のおぼろ月夜はと
21辛崎されば朧哉とあるべき句を朧にてといふ事は哉は決定の辞にてされば朧かなとあるべき_を朧にてと云句作り哉は決定のこと葉にてあるひは朧かなとあるべき_を朧にてと云ことは哉は決定のこと葉なれば朧哉とあるべき句をにてと云は哉決定の言葉なればにてされば朧哉とあるべき句おぼろにてといふ事_哉は決定_辞にて
比良の高根の花を見るかなひらのたかねのはなを見るかな比良の高根のをみるかな比良の高根のを見る哉
23宵闇尤宵闇に月は付がたし打越にては殊にわろし_宵闇に月は付がたしうち越に月は付がたしうちこしに_は殊に悪し_宵闇に月は付がたし打越に殊にわろし_宵闇に_は月を付がたうち越には殊に悪し
・ ⑤双林寺本①其角本との一致は、前項の分も含めるとかなり多く、③校正本を遙かに越える。⑤双林寺本が分かりやすいという印象に合う。

ものであった。
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Ⅴ 其角本と諸本の不一致

・ 一致の見られない部分について、検討を試みる。

①其角本
其角門相伝本
「昼の錦」
②初版本
「昼錦抄」
③校正本
「二十五箇条」
④獅子門本
支考門「二十五ヶ条」
⑤双林寺本
宋屋本「昼の錦」
3虚実連歌の虚也連歌のなり連歌のなり連歌の嘘ウソなり連歌のなり
・ 「俳諧雅楽抄」に「実に惜むは連歌の虚也」とあって、「虚」と決まる。は誤写、の「実」は支考の書き替え、の「嘘」は、支考の誤写か。
4変化しばらくの言語変化してしばらく_言語変化にして_言語変化してしばらく_変化言語変化にして
・ 「言語のあや」の説明部分。「しばらく(の)」は、「一時的に」の意。
5起定人は天地より働きあれども人は_地より働けれ共人は天地より働けれ共人は天地より働あれども人は天地より働くものなれど
・ が一致。「人は天地より働けれども」は意味不明。
7脇一句相対に脇の体なれば一句相対して脇の体ならば一句相対して脇の体なれば一句相対に脇の体なれば
・ 「なれば」で意味が通る。「となれば」は「ならば」と同意で不可。
【なれ-ば】断定の助動詞「なり」已然形+接続助詞「ば」。脇の体だから、したがって。
【なら-ば】断定の助動詞「なり」未然形+接続助詞「ば」。未成立のこと・ものを成立したと仮定する条件。もし脇の体ならば。
8第三一座をいさめて他聞をゆるさず一座をいましめて他_をめさす一座をいましめて他聞を免さず一座を戒て他聞をゆるさず一座をいましめて他聞をゆるさず
: 「諫む・いさむ」は禁止するの意。本来目上に対して用いる語なので、連衆への敬意を同時に表す。書き手が芭蕉なので、「諫む」がよい。第三者が「翁が」と記述するときは、「戒む」となる。
・ 、「免」を仮名文字と誤読。
9四句只人やり句人は只やり句 やり句人唯やり句人唯やり句
・ 「ただ」は「唯・只・但」と書ける。「もっぱら」の意の副詞だが、文内の位置により、掛かる部分が変わるので、意味が変わる。
    〔ただ〕→〔(人)→(やり句する様に)→(いひなしたれど)〕
  〔人〕 →〔(ただ)→(やり句するやうに)〕→〔云なしたれど〕

・ 「遣り句をするよう、もっぱら人は言う」のであって、「ひたすら遣り句をするよう、人は言う」のではないから、がよい。
12当季獅子舞と趣向を定めては門の花とあしらひ長刀と趣向を定めては橋の月とあしらひ獅子舞と趣向をさだめ_門の花とあしらひ__獅子舞と趣向を定め_門の花とあしらひ薙刀と趣向を定て_橋の月とあしらひ獅子と趣向を_門の花とあしらひ長刀と趣向_橋の月とあしら獅子舞と趣向を定めて_門の花とあしらひ長刀と趣向を定めて_橋の月とあしら
・ 「ては~、ては~」で、趣向と当季の対を繰り返す構文が明確になる。「は」がないと、曖昧になって、誤読を招きやすい。
13二季発句に此類ある時発句に此ある時発句にこのことば有時発句に此ある時
・ 「この類」がよい。「見立月の類」の意で、外に卯の花を月光に見立てて言う「卯花月夜」がある。「この言葉」では「星月夜」に限定してしまうし、「発句にあるときは」と書けば済むことになる。
むし砧の類は夜分の心ならぬは面白からずむし砧の類は夜分の心ならでは面白からず虫砧の類は夜分の心ならねば面白からず虫砧の類は_
・ 「夜分の心で詠んでいない句は」の意である。は、共に「夜分の心でなくては」と解せるが、一文の意が「夜分の心で鳴かない虫や夜分の心で打たない衣は、面白くない」となっている。
14発季平句にする時は四季の差合平句にする時は同季の指合発句にする時は当季平句にしては指合発句にする時は当季にして平句にする時は__差合発句にする時は当季にして平句にする時は__さし合
・ 「四季」がよい。季の差し合いは四季にわたる。
17趣向始めずといふ事なくはじまらずといふ事なしはじまらずといふ事なしはじめといふ物なく
・ 「始めず」がよい。書き手の意図が文脈上の課題。
人間明暮の働をもしるべきにや人間明暮の働きともしるべきなり人間明くれの働きともしるべ人間明暮の働をもしるべしべきなり人間の働も知るべし
・ 「にや」がよい。上に「もし~すれば」があるので「結果~だろう」と結ぶ。「にやあらん」の省略形。
19切字此法の俳書に出したる証句古のころのはい書に出たる証句此頃の俳書に出たる証句此頃の俳書に出たる証句
・ 「この法」とは、「大廻し・玄妙切の法」を指す。「俳書」は「誹諧埋木」「誹諧小式」など
あきらかに耳目口の三段をいへるか明らかに目耳口と三段をいへり__目耳口と三段をいへり眼耳口の三段をいへり明にいえるか目耳口の三段を明にいえる_
・ 句の順では「目耳口」だが、順序は問題にならない。
・ に「言へるか」と、不確かな断定。断定しきらない方がよい。
22鳶前句の心をおこして~ 托イ詫物比興と前句の心を発して~ 詠物比興と前句の心を発して~ 詫物比興と前句の心を起して~ 抱句挓物比興と前句の心をおこして~ 托物比興と
   「托物」タクブツ。異体字に「託」がある。託し物の意か。
   ※【托】音:タク、訓:たのむ,たくす、異体:託、熟語:茶托,托生,委托,屈托,托鉢
   「挓物」タブツ。ひらく物で、意味不明。
   ※【挓】音:タ、訓:ひらく。
  「詫物」タブツ。異体字に「侘」がある。侘び物で、意味不明。
   ※【詫】音:タ、訓:わびる,わび,わびしい、異体:侘、熟語:詫びる,詫言,詫事,詫状
   「詠物」エイブツ。詠め物の意。自然の風物・身辺の器物などを題材として詩歌を作ること。

・ 「挓」「詫(侘)」は、意味的に違う。
・ こなれた熟語としては、の「詠物比興」を採らざるを得ない。ちなみに「比興」とは、「漢詩六体や和歌六義の「比・興」から、他のものにたとえて面白く表現すること」である。しかし、「詠物」は、意味が広すぎる。俳諧にとっては、森羅万象のずべてが題材である。
・ 「托物」はどうであろうか。は、筆写者による訂正前は「托」であった。「托」を「侘」と読み違え「詫」に直した可能性がある。も「托」である。原本に「詠」とあったものを「托」と間違えることは難しい。
 「托」は手に載せた物を他の手に移すということから、「たのむ・たくす」と読む字である。「前句の心をおこして、こなたよりいひなしたる」という説明に合うのではないか。
 ここでは、の訂正を棄却し、と同じく「前句の心をおこして~ 托物比興と」を良しとする。
皆々子細ある事也此類はみなみな子細ある事なり此類皆子細有事之此類には__子細も有_
・ 「この類は」は、「前句のことばより、歌の前書や歌の様と、言いなしたり聞きなしたりした句」。に漏らしたか。なくとも可。
23宵闇花前にのびて無念なれば三句の心にもたせて八月の字にて花前にのびて無念なれば三句の心に持たせて八月のぐわつの字にて花前にのびて無念なれば三句の心に月を持せたるが八月のぐわつの字にて花前にのびて無念なれば三句の心に月をもたせたるが八月の月のにて前花なりそれへ延びくるは無念なれば三句の心に月をもたせては月なみの月の字にて
・ に「ぐわつ」を漏らしたか。なくとも可。
24名所名所を云ひ季を云ひ意をいふ時は句作りかならずおだやかなるまじ_を云季をいふ時は為作心穏なるまじ_を云季を云心いふ時は句作必穏なるまじ_をいひ季を云情を云時は句作穏か成べし_をいひ季をいひ意をいふ時は句作必おだやかならず
・ 「22鳶 ○○比興」の修正部分を除き、①其角本の表現が好ましい

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Ⅵ 其角本の誤謬

・ ②初版本と照合したとき、①其角本側に問題があると思われる内容を並べた。
・ の訂正部分を桃色字で示す。

①其角本
其角門相伝本
「昼の錦」
②初版本
西村養魚蔵本
「昼錦抄」
③校正本
「二十五箇条」
④獅子門本
支考門「二十五ヶ条」
⑤双林寺本
宋屋本「昼の錦」
4変化白きをといふも黒きを白し黒きを黒しといふも黒_を白し_を黒しと云も黒を白しと黒きをくろしとも白きを白し
・ 、副助詞「も」があって、「黒いものを黒いと言うのも、白いと言うのも」の意となり、「言語の変化」につながる。「白を黒」と「黒を白」は、同趣向であり、変化はない。また、「~と言う」の「と」の前は終止形が来る。「黒しと言う」であって、「黒きと言う」ではない。
 → 「黒きを黒しといふも黒きを白し」と修正。
6発切たとへば切字なき発句とても切ぬたとへ切字ある発句とてもきれぬ切字有発句とても心のきれぬたとへ切字ある発句とてもこころのきれぬ
 → 「たとへ切字ある発句とてもきれぬ」と修正。
7脇脇は亭主の位なれば己が心を負ても~位なれば脇はが句をまげてもワキは亭主の位なれば脇をおのれが心をまげても
・ に記されてをり、去来には注釈を加えたと見る。
 → 「発句は客の位にして、脇は亭主の位なれば、己が心を負まげても、発句に云残したる草木・山川の一字二字の風情を加へて、客の余情をつくすべきなり」の一文を注記。
11花茶の_花茶の出ばな の出花茶の心花
・ 「茶の花」は、「茶の木の花」で、「季語蔵」によれば、「初冬 植物」の季語である。
 → 「茶の出花」と修正。
13二季前句の二字節句の二字節供の二字節句の二季
 → 「節供の二字」と修正。
16付句我心しづみぬれば我心泬みぬれば我心泬みぬれば
・ 「無性に案じぬが能なり。我心なづみぬれば、趣向もしづみ、我草臥れより人も草臥れて、一座成就せず」とある。「なづむ」の意味は、次の通り。
【なづむ 泥む 滞む 泬む】 ㋐心がとらわれる。こだわる。執着する。㋑難渋する。滞る。㋒悩み苦しむ。
 「心がとらわれ、むやみに考え込めば、趣向も病んで、自他ともに草臥れる」という文意なので、「なづみ」である。
 → 「我心なづみぬれば」と修正。
俳諧の世情に便りあり修行也とははいかいの_情にたよりある修行成とはいかいの世情にたよりある修行成と俳諧の世情に便ある修行也とは俳諧の世情に便ある修行なりとは
 → 「俳諧の世情に便りある修行也とは」と修正。
23宵闇ある時歌仙の_七句目にて有時歌仙の裏七句めにて有時歌仙の七句めにてある時歌仙の裏七句目にてある時歌仙の裏七句目にて
 → 「ある時歌仙の七句目にて」と修正。
25仮名



第25条は
「切字の秘訣」

あまり事繁きゆへにあまり繁きゆへに_事繁き故あまり事しげきゆへに
・ の「あまり事繁きゆへに」で可。
さむうあつうと書ては寒ふ暑ふさむうあつうてはさむくあつくと云ては
・ 仮名書きの経文は「さむくあつく」と書いている。経文は音便を用いない。
・ ②初版本が、支考を経たものでないことは、このページの比較で明らかである。


昼の錦/二十五箇条 関連ページ目録
其角伝受翻刻・校訂 昼の錦  元禄2年伝受・元禄17年相伝
米沢本を翻刻、横書きに変換。諸本と照合し訂正を加え、伝受時の芭蕉伝書を再現。
去来伝受校訂 二十五箇条  元禄7年伝受・宝永7年支考入手
初版本「昼錦抄」・宋屋本「昼の錦」・其角本「昼の錦」と照合、支考の改変部分が顕在化。
宋屋本 昼の錦・引続錦紙  宝永7年支考写本の写
初版本「昼錦抄」と、よく一致する。口伝集を併せて載せる。
校合・再現 昼の錦
諸本を校合、去来伝受本を再現。
許六伝受俳諧雅楽抄  元禄6年伝受
許六の発句作法書。口訣を得た内から、五箇条を「翁曰」と引用。
資料 資料「昼の錦/二十五箇条」 : 古今集・去来抄・七部集・三四考・寂栞などの関連部分をまとめる。
「二十五箇条」と諸伝書 : 山中問答・葛の松原・有也無也之関・貞享式海印録などとの関連を探る。
「昼の錦・二十五箇条」検討 : 去来相伝本、初版本・校正本・支考門本・宋屋本の表現を比較検討。
「二十五箇条」の伝承と空阿 : 空阿の遺品に「不易鏡」があって、宋屋本とほぼ同じ奥書を記す。
「昼の錦・二十五箇条」諸本の関連 : 其角伝受本と各去来伝受本とを比較し、校合の資料とする。



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