俳諧の決め事

  「決め事」は一座の約束事。座に臨んでは宗匠に従う。宗匠は衆議を尊重する。

索引
歌仙の構成歌仙の進行用語・用字・音付け
花の句月の句恋の句


句の用語

 万葉から和歌・連歌の歴史が積み重なる中、語彙の分類がされ、俳諧でも重視している。


句の用語/区
区分 関連語
神祇

神・社殿・本殿・拝殿・神宮・神社・大社・磐座・郷社・幣殿・神殿・鎮守・御神体・神の権現・神の社・神の宮。
宮司・神主・祢宜・巫女・乙女子・宮人・斎主・斎員・社家・神職・楽人・陰陽師・神祇官。
参拝・手水・拍手・柏手・火打・祝詞・託宣・お祓い・夢想祓い・厄払い・清め・禊ぎ・御籤・起請・誓文・神楽・祭り・祭りの初午・参詣の講・神への願・遷宮。
玉垣・瑞垣・鳥居・参道・注連縄・本坪鈴・狛犬・御幣・金木・絵馬・神輿・三方・水玉・玉串。

非神祇

衣装の烏帽子・装束。区分の宮家。一般的な鈴・手水・拍手。暦・天文・占。行事の雛祭・七夕祭。時節の初午・玄猪。金融の講。

釈教

仏・寺・堂・庫裏・坊・塔頭・山門・塔。釈迦・阿弥陀・如来・観音・菩薩・地蔵・達磨・明王・羅漢・○○天・仏の権現。
一宗の元祖・宗派の長老・和尚・法師・検校・入道・尼・修験者・坊主・虚無僧・僧侶・比丘・座頭・和上・山伏。
発心・出家・座禅・布施・引導・経・安居・念仏・声聞・回向・剃髪・供養・手向・精進・潔斎・仏への願・法会の講・仏事の盆・仏事の十夜・仏道の修行。
仏像・釣鐘・数珠・卒塔婆・曼荼羅・枯山水・木魚。因果・宿業・流転・観念・観想・彼岸・火宅・三界・地獄・餓鬼・来迎・涅槃。

非釈教

宗教施設でない庵・坊・院・寮。宗教用具でない笈・撞木杖・頭陀袋・十徳・常の衣。時報の鐘。一般的な行脚・坊主子・寺子・木像・先祖・元祖・伯父の説法・呑は極楽・迷悟。風流人の西行・長明・布袋。地名の寺号(国分寺市・大聖寺町)・僧正が谷・寺町・数珠屋町。動物の数珠懸鳩・仏法僧。植物の菩提樹・華鬘・観音竹。時節・時刻の盆・彼岸・十夜。俗説の閻魔・鬼・地獄。

 詞を定めず。恋句は、恋の情あるもの。

貞門
談林

夫婦・二世の契・ひよくの中・連理の中・偕老洞穴・寝物語・ささやく・ふりのよき・落とし文・身をこがす・小指切り・恋やせ・口紅・男狂・涕ぐむ・りんき・そひふし・人妻・睦言・涙川・爪紅・ 約束・怨念・傾城・遊女・婚礼・懐妊・くどく・ほるる・鬼も十八・やくそく・離別・おとし文・胸をやく・情ぶり・くどきごと・淵に身投・よめ入・口べに・爪べに・姿見の鏡・匂袋・恋風・長枕・若後家

連歌

なまめく・後朝・えにし・よすが・恋すてふ・ぬれ衣・片おもひ・恥かはし・思川・雅をかはす・恨み・かこつ・契り・もの思い・手弱女・上の空・心乱る・そねみ・ねたみ・さかしら・眉墨・逢瀬・添い寝・ささめ言・心替え・浅はか・独り居・乱れ髪・うかるる・目くばせ

無常

腹切・辞世・孤独死・余命。死人・屍・野ざらし・白骨・髑髏・野仏・遺体。棺・あだし野・喪・通夜・葬儀・忌中・立ち酒・野辺送り・火葬・葬場・斎場・火屋・無常の煙。墓・塚・魂棚・位牌。死出の山・人魂・冥土・黄泉・幽霊。

述懐

左遷・倒産・夜逃。零落・不幸・貧。老・年寄り・隠居・白髪・浪人・継子・寡婦・鰥夫・世捨。金貸・借銭・売家・古家・隠れ家・借家。渡世・浮世。命。往昔。

軽述懐

述懐の内、哀切嘆息の情が感じられないもの。

 ・ 例えば、敬老会、懐かしく楽しく思い出すような懐旧・懐古。

旅体名所歌枕。広く知られる景勝地や温泉地など。

地名

広く知られる国(京・江戸・摂津・尾張など)・山や湖沼河川名・街道や峠名。外国名。都(みやこ)。

旅・巡礼・宿・草枕など

軽旅体

無名の地名、及び名所名を冠した無名のもの。例えば「冬の日、いかに見よとの巻」にある「岐阜山」。

 以上、表六句に詠まない。

 但し、以下を除く。

  ・ 発句及びその発句に添える脇。
  ・ 上記「非神祇」「非釈教」の詞。
  ・ 古式に恋の詞とされたものの内、恋の情のない文字。例えば、男・女、女偏の字。
  ・ 上記「軽述懐」「軽旅体」の詞。


 また、釈教・無常・述懐の判別に留意する。
 ・ 仏道は釈経。衰老病死は無常。懐旧慨嘆・哀傷は述懐。

乾坤天象日・月・星辰。
光り物雷・稲妻・電光。
降り物雨・露・霜・雪・雹・霖・霙・霰。霧。
聳き物雲・霞・虹・霓・靄・煙・曇。霧。
雑部天・空・日和・凪・天気・照・晴・闇・朧。
風。

非乾坤

水・氷は水辺。

時分朝・昼・夕・暮・夜・明等の区分の内、夜を特に夜分という。
夜分暮れて・宵・更・夜・夜更・闇・朧・暗き・星明り等

非夜分

夜体の句で用いられても、「夕・明・暁等」はそれぞれの時分。昼夜ある「虫・砧・月・稲妻・暮・露・霜・閨・枕・夜具・蚊屋・眠・起・夢・灯火等」は、夜分ではない。
古式では「むささび・狐・にわとり・梟・蛍。床・蝋燭・枕・布団・寝間着・下紐・軒・蚊遣り火・蚊帳。横雲・曙・暁・稲妻・霹靂・宵・明け方・明け暮れ・露更けて・埋み火・灯火・まどろむ・きぬぎぬ・寝る・睦言・神楽・七夕・花火など」も夜分とされた。

時節四季春・夏・秋・冬。

一月~十二月。睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走など。

二十四節気……立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨・立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑・立秋・処暑・白露・秋分・寒露・霜降・立冬・小雪・大雪・冬至・小寒・大寒。

雑節……節分・彼岸・社日・八十八夜・入梅・半夏生・土用・二百十日・二百二十日。さらに、初午・上元・中元・下元・盆(盂蘭盆)・大祓。

備考

その他、歳時記の時節の語。
 彼岸・土用・大祓など、二季に渡るものは用法に留意。

人倫 人倫とは、人と人との間柄、君臣並びに六親及び九族間の秩序を言う。
人倫 高祖父母・曽祖父母・祖父母・父母・自分・子・孫・曽孫・玄孫の九族。又は、自分の「親・子、兄・弟、嫁・婿、舅・姑、祖父・祖母、孫・ひ孫、おじ・おば、甥・姪、妻・妾など」の関係。
異人倫
の噂

……君・関白・納言・頭・介等の官名、僧の官名、大名・奉行・代官の類、神主・坊主・名主・何主の類。又、帝・仙洞・新院・春宮・宮方・公家方・殿・御簾中・御台・局・奥様・内室・後家・方丈・住持・西堂・納所・隠居・座頭・庄屋等の居所名の物。又熊谷・塩冶等の姓名、並びに古人名など。司る人を指す。

……翁・老・若・僧・尼・人・相人・遊人・何人の類。客・友・仲間・連衆・連・同士・近付・道心・乗合・旦那・あなた・先生・貴公・慰々・恋君・民・百姓・賤奴・丁稚・敵・味方・汝・其許・足下など。男女を分かたず、他を指す。

……我・己・某・私・拙者・手前・自身共・此方など。影法師も。自らを指す。

……一人・二人・幾人・何騎・軍・多勢・群集・屯・余・衆生など。人数を指す。

……仏師・医師・画師・何師の類。酒好・餅好・何好の類。糸売、綿売類。関取・草取の類。槍持・沓持の類。曲者・正直者の類。大工・木挽・左官・石切・日用、諸職名。碁打・三絃弾・万歳・大黒舞、諸島者の類。六部・順礼・道心・遊行・何参・後生願の類。宮司・社務・祢宜の類。武士・侍・小姓・供奉・出代・新参・手代・番頭・腰元の類。使・飛脚・懸乞・水汲・田打・駕舁・六尺の類。上手・下手・上戸・下戸・猿引・馬士の類。大力・英勇・阿房の類。何番・何守の類。傾城・太鼓持、遣手のなど。技芸・役職による呼称を指す。

非人倫

神仏・妖怪など。

里・原・村・市・町・辻・庭・場・石・岩・砂・土・園・田・畑・野・浜・道。
山類

山・峰・嶽・岡・洞・岫・峡・坂・尾上・九折・高根・岨・頂・峠・麓・杣。谷・島・崎。

非山類

梯・炭竈。滝。

水辺

……海・浜・浦・堤・江・港・渚・沼・川・池・滝・泉・井・溝・岬。滝・谷・島・崎。

……水・清水・塩・波・流・氷室・淡・潮・氷。舟・橋。

居所

屋・家・宅・里・屋形・城・宿・棟・亭。隣、二階。

非居所

宮・堂・蔵・門・玄関・風呂・雪隠・壁・背戸・窓・戸・障子・格子・棟木・屋根・甍・瓦・床・棚・建具・畳・簾・暖簾・外面・築地・垣・軒・庭・露地。

 

句の用語/説明
語彙読み解説
植物うえもの 蘭・菊などの草類、松・梅などの木類の総称。
懐旧かいきゅう 昔を懐かしむ気持ち。
居所きょしょ 住居等建物に関連した語彙の内、人の居場所。
食物くいもの 飲むものと食べるもの。動植物名でも、食材や調理されたものは食物として扱う。
景物けいぶつ 四季折々に愛ではやされるもの。花・時鳥・月・雪は四箇の景物。紅葉を加えたものは五箇の景物。
山類さんるい 山に関連した語彙の分類。
時節じせつ 季節、時候に関するもの。
時分じぶん 昼夜・朝・暮など一日の時間の推移、時間帯に関するもの。
述懐 しゅっかい・じゅっかい

過去に関連した語彙の分類。

老いや不遇を嘆く気持ちや、恨み言。

釈教

しゃくきょう・しゃっきょう

仏教に関連した語彙の分類。

仏名・寺名・僧・仏事・梵鐘など仏教に関するもの。

神祇じんぎ

神道に関連した語彙の分類。

天神地神の意。社・鳥居・神楽・祭・氏神など神道に関するもの。

人倫じんりん 人間の肢体・地位身分・職業・家族親族・言動・嗜好など。
水辺すいへん 河川・湖沼・海に関連した語彙の分類。
聳き物そびきもの 空中に漂うものの分類。そびえ物とも。
たい本来的で不変の要素またはそれ自体。
病体びょうたい 病気の状態、あるいは病名。
降り物ふりもの 空から降るものの分類。
無常むじょう 死に関連した語彙の分類。
名所めいしょ 景色、古跡、歌枕などで有名な地名。
夜分やぶん

夜の語彙の分類。夜勤・夜学・夜なべなど。

ゆう付帯的で可変の要素またはその機能。
妖怪ようかい 雪女郎・河童・妖精など。魑魅魍魎。
老体ろうたい 老いに関するもの、老いる・老人・祖父・祖母・爺婆・八十路など。


用字

俳諧の句の表記について

一句をどう表現するか、表記について工夫する。
俳諧の句は、歴史的仮名遣いが原則
  あなとうと→あなたふと芋植えて→芋植ゑて桜みしょうぞ→桜みせうぞ
 歴史的仮名遣いは、漢字を使うと、読みやすくなります。
  ひやうばんのへうはまうじう→ 評判の豹は猛獣 
  あうたうのえのあふぎであふぐ→ 桜桃の絵の扇で煽ぐ 
  さうてうにいちやうちりたりてふのごと→ 早朝に銀杏散りたり蝶のごと 
 促音・拗音を小さく書かない。
  九千くんじゅの→九千くんじゆて江戸を→却て江戸をちょ ちょと→ちよ ちよ
 片仮名表記をするときは、現代仮名遣いです。外来語・擬声語・外国名・外国人名・動植物名など。
  あいすくりいむ→アイスクリームぶざあがぶう→ブザーがブーちゅうりっぷ→チューリップ
文字遣いは、自由。漢字・片仮名・平仮名で工夫する。言い換えも念頭に。
  迷うときは、常用漢字表に添う。
   うきくさ→萍・浮草・浮き草・うき草・ウキクサなど
   ほととぎす→時鳥・不如帰・郭公・黄昏鳥・田鵑・霍公・菖蒲鳥・杜魂・布谷・ほととぎす・ホトトギスなど多数。
しき(子規)・うづきどり(卯月鳥)・さなえどり(早苗鳥)・とけん(杜鵑)・時つ鳥など、異名に言い換えられる。
商品名・商標名は意図がなければ避ける
  ガムテープ→粘着テープ宅急便→宅配便万歩計→歩数計

 


音節と五と七のリズムについて

俳諧の句は、長句五七五、短句七七の音数厳守。
音数:読み上げたときの音数で数えます。音節数です。
 母音、子音+母音の音節です。aiueo、kstnhmyrwgzdbp+aiueo。雲雀鳴く→ひ・ば・り・な・く(5)
 拗音は一音です。「きゃ・しゅ・ちょ」の類。くねる音。「ふぁ・くゎ」なども一音。桜みせうぞ→さ・く・ら・み・しょ・う・ぞ(7)
 促音は一音です。「っ」で表す。つまる音。却つて江戸を→か・え・・て・え・ど・を(7)
 撥音は一音です。「ん」で表す。はねる音。nとmがある。無残やな→む・ざ・・や・な(5)
  長音部は一音です。「あ・い・う・え(・お)」を添える。のばす音。龍宮も→りゅ・・ぐ・・も(5)
 QA問題「特急電車発車オーライ」の音数は?→答え:と・っ・きゅ・う・で・ん・しゃ(7)は・っ・しゃ・お・う・ら・い(7)
  ※上の問題の答えは、「:」以下をドラッグ。
句切れと調子は密接に関連
 行く春や/鳥啼き魚の目は泪初句切れ七五調
 草の戸も・住み替はる代ぞ/雛の家二句切れ五七調
 しほらしき名や/小松吹萩すゝき中間切れ
 語られぬ湯殿にぬらす袂かな/句切れ無しこの句は七五調
七七の短句の文節構成
 ※ 細道と七部集の芭蕉の短句126句中、124句について調べた。
 上七:7音の構成が43、34合わせて105句で、85%。25を入れると96%。
 下七:34、52、25の順、計124句。43は皆無。
   ○ 下七:43で終わる句はない。
 * 「俳諧埋木」に、「すべて、三四をよきにさだめ、四三をあしきにさだめたり」とあるとおり。
 * では、「埋木」に「二五と五二とは、その句によるべきにやとぞ」と、曖昧にしている25・52はどうか。
  

○ 下七:25は9句ある。

  <かぜ、ほのかなり。/ちを、みおくなり。/こえ、いかすなり。/なき、たまひけり。/よき、やしろなり。
    みな、こまちなり。/わが、わらひがお。/もの、おもいゐる。/まず、ふみをやる>

 ・ 句末5の構成は、

  形容動詞ほのか(語幹)+なり(活用語尾)
  動詞+助動詞みおく+なり/いかす+なり/たまひ+けり
  名詞+助動詞やしろ+なり/こまち+なり
  複合名詞わらひ(動詞)+がお(名詞)
  複合動詞おもい(動詞)+ゐる(名詞)
  [名詞+助詞]→動詞ふみを・やる
  

  で、すべて32となっていて、下七は、232となっていることが分かる。従って、読み上げるとき、23・2と切れば、52のリズムと同じになる。

○ 下七:52は、41句。下七の構成は、

   [名詞+連体修飾の格助詞]→名詞
23句
<あかつきの、こゑ/ろくでうが、かみ/ありあけの、つき/いのししの、つま/いのししの、とこ/うすものの、つゆ/うづきのの、すえ/おしあけの、はる/おふくろの、こと/かどかどの、こえ/かなやまの、かみ/かわおとの、つき/きんねんの、さく/くろぼこの、みち/げんじようの、はこ/ぢんちゆうの、いち/そうあんの、きやく/たけくまの、つと/のりものの、わき/ふところの、ぎん/やまいぬの、こゑ/ゆふだちの、みの/らうごしの、ふね>
   [連体修飾部]→名詞(+助詞)
9句
<しづかなる、おか/たた・れ・たる、あき/つたえ・たる、もん/なきふせる、つき/な・を→とむる、つき/ひとり→みる、つき/ふゆごもる、やど/よひねする、あき/もりつくす、よ・ぞ>
   その他
9句
<かたそでを、とく/なき→ひと・を、みん/りんざい・を、まつ/うたの・しふ、あむ/ありあかし、おく/はだざむう、なる/なぶりもの、なり/なきしまひ、たり/ほめ・られ・に、けり>
 以上、一定の傾向が見られる。
  詳細は「芭蕉の短句、リズム検討」参照。(別窓に表示。)